【黒バス】ふはっ、騙されてやがるの(笑)２【赤司征十郎】

６２Ｑ　俺が望んでるのはただ一つ。 ページ16

ダッシュで家に帰って、目に留まったのは今朝のポスト。
そっと手を伸ばしてふたを開ける。

「……無ぇ…」
中は空っぽで。

「…監視カメラでも…。」
そう呟いたけど無言で首を振って家に入った。
だってそんなのめんどうだから。

鞄を部屋に頬り投げて、いつも通りのネットサーフィンをして。
それが日常なのにどうしてこんなにもそわそわするのか。

ふ、と思い出した。征十郎が言っていた花言葉を。

「…のろいと…恋」
バカバカしい。
そうわかっているのに気が付けば調べていた。

あいつが言ったようにそれはアイヌの伝説だった。

愛する人や片思いをしている人がいた時に、愛を告げる前にこっそりと心をこめて名も告げずにクロユリをその人の側に置くという。

「それを相手が気付いて手に取れば、想いが通じいつしか二人は結ばれる」
いまどきこんなのありかよ。

顔がわからないのになんの根拠があって結ばれるのだろう。

携帯に届くメールも、ポストに入れられた造花も、かき回される感情だって。
なにひとつ望んでない。

俺が望んでるのはただ一つ。
俺の手のひらでまわる世界。

ただそれだけなのに。

「……なんにもうまくいかねぇのな」

ぽつりと溢した言葉は誰にも届く筈はなくただ足下へコトリと落ちた。
そんな気がした。

自分はただ…。

自分はただ、世界が思うようにまわればいい。
俺がもう傷付かなくていい世界。

……弱虫な私が、傷付かない世界。
私にとって優しくて、
私にとってさみしい世界が。

それが欲しかった

それを手にする術はもう身につけていたのに。

「…腹立つ」

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