坂口安吾と云う男 。 ページ13
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ーーー私の異能で、人を殺さなければいい?
『____そんな事、出来る訳がないでしょう。』
その戸惑いは一瞬だけだった。
胸の中に駆け巡る、たった一瞬の言葉は次の瞬間には目の前の男への明確な殺意へと転じた。
くだらない、と内心で一蹴しながら。
「ッ、あ"がッ!!!!!」
Aの前で、少しでも隙を見せればそれは命取りとなる。
あっさりと異能によってその身体を崩れさせた男は、断末魔と呼ぶには短い声を上げて壊れた。
男が壊れた所為で、視界を遮るものがなくなった。
はてさて、突如聞こえた“第三者”の声によって男に隙が出来た。
お礼、なんて云う気は更々無いけれど、一応存在を確認しようとそれに目を向けた。
「ーーー全く。太宰君が拾ってきたと云う異能力者が、真逆こんな所で絡まれているとは想像もしませんでしたよ。
____一体、こんな所で何をやっているんです?」
『.....ごめん、誰?』
きっちり整えられ、前髪を後ろへと撫で付けた黒髪に、丸眼鏡。
学者風の出で立ちの男は、呆れたようにAを見下ろし、壁に背をつけ座り込んでいる彼女に手を差し伸べた。
男にしては、厭に白い手が目の前に差し出されるが、Aはそれを眉を寄せながら見つめると、手を取らずに立ち上がった。
ややふらついてはいたが。
『.....太宰さんの知り合いって事は、幹部さんか何か?』
「.......いえ、ただの情報員です。太宰君とは____友人です。」
『え、太宰さんの友人って』
「何故太宰君の名前が出た瞬間、警戒心を強くするんですか」
【類は友を呼ぶ】と云う言葉があるのを私は知っている。
つまり、この彼も太宰と同じくらいには____色々と癖のある人間なのだろう(オブラートに包んで云うと)
汚れが付いてしまった自分のすかぁとを手で簡単に払うと、その様子を見ていた男は静かに口を開いた。
「ーーー貴女の名前は?」
それを聞いて何になるのだろうか。
怪訝そうに男を見つめると、彼の瞳は何処か探っているようにも見えて。
そりゃあそうだろう。
彼は情報員と云っていた。新しくマフィアに加入した“異様な少女”についての情報を得たいのだろう。
それを理解すると、ただ無表情に云った。
『 人 に 名 を 聞 く 前 に 、自 分 が 名 乗 る の が 礼 儀 っ て も の で し ょ ? 』
「.....確かにそうですね。」
ーーー坂口安吾と云います。
ポートマフィア情報員 坂口安吾
異能力名 【堕落論】
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時