不機嫌と変化 。 ページ12
.
ーーー嗚呼、それとも一回私に壊されてみる?
蜂蜜色の髪は揺れ、紅茶色の瞳は面倒臭そうに男へと注がれている。
襤褸を纏った異国の男は、暫く黙って黙考し、それでも恐れずに銃を向けた。
如何やら、相当訓練されているようだ。殺気は先程までとは比べ物にならないくらい爆発的に膨れ上がっている。
本格的に自分を殺す積りらしい。
それを悟ったAは、盛大なため息を吐いた。
『私一人を殺して何の得になるのかてんでわからないよ。』
「...我々は、損得になど囚われていない。
ただ望むのは、生からの解放。」
『____要するに、自 殺願望者?
益々厭だ、おじさんみたいな人。』
死ぬのなら勝手に死ねばいい。
けれど、それを望むのなら与えてやろうか。
生憎、今の私は少しばかり機嫌が悪い。
【敵は壊せ。容赦なく壊せ。それがお前の本性だ。】
いつの日か聞いた、その教訓を胸に。
深夜の路地裏で、激しい銃撃音が鳴り響いた。
***
『ッ、!!』
痛みに顔を歪める。身体の節々が悲鳴をあげる。
自身の腹にのめり込んだ脚は、Aを壁へと叩きつけた。
「小娘一人では、俺を殺す事は出来なかったか。」
冷ややかな視線でAを見下ろす男もまた、Aと同じく傷だらけであった。
銃はとっくに壊されており、右腕が二の腕のあたりで切断されていた。
ーーーAが異能で男の右腕に触れた瞬間、男は迷いなく自身の腕を切り落とした。
破壊の侵食が、全身に回る一瞬前に。
Aの異能は接近戦でこそ真価を発揮する。しかし相手の男はとても体術に優れていた。接近戦になればなるほど、Aは不利になる。
中原に指導を受けているAだが、相手はそれよりも格上だった。
睨むようにして男を見上げるA。
止めだ、と云わんばかりに振り下ろされる短刀が、Aの胸へと向かう寸前、
「ーーー何をしているんです?」
「っ、お前は、!」
一瞬、男の気がそれた。
手の止まった短刀を壊し、思わず後ろを振り向いてしまった男の胸元へと左手を伸ばす。
敵を殺せなければ、存在価値など直ぐに見出されず処分されるだろう。
しかし、触れる寸前でAの手は止まった。
【ーーー異能を使わなければ良い】
《道具》として利用されたくないのならば。
『____っ』
脳裏に焼きついたその言葉に不快そうに顔を歪めた。
.
2067人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時