LOVE ME LOVE ME

▽ ページ46

・

ユンからの電話に出た時

ふたりが事故に遭ったと聞いた時


ミノに喝を入れられた時も

オーナーの真っ赤な愛車を運転してる時も



考えてるのは、フニのことばかりだったんだ。

フニのことしか、考えられなかった。




心配したのもフニ。

失いたくないと思ったのもフニ。



体中の水分を使い果たすほど

人目も気にせず、わーわー大泣きしたのも



フニともう会えないんじゃないかって

居なくなるかもしれないって、怖かったから。




きっと、ヘギョさんだから言えたんだろう。


初めましての相手だったからこそ、親友のアヤにも、現場で事態収拾に追われてるハルちゃんにも見せられず、自分自身にも隠してた素直な気持ちを。



殆ど知らない相手だったけど

美人で性格もかっこよくて
ちょっとお節介なヘギョさんだったから


今までの意固地は、スルリと簡単に剥がされた。

意地を張らず、正直になれたんだと思う。





｢泣くほどだもんね〜。
Aヌナが泣くほど俺をね〜。へぇ〜。｣

｢煩い...。｣



なのに私は、まだ肝心なあと1歩が踏み出せない。

助手席でニヤニヤと頬骨を浮かせるこのジャガイモが、もう恋愛対象だと自覚もしてるのに。




だって、あれは酷いかった...

後ろで本人に聞かせてたなんて...


ていうか、そもそもそれが目的だったとか
あの夫婦は、夫婦そろって策略家だ。

夫は有能で有名な建築家。妻は美人なお医者さん。

そのDNA、どこで分けてくれんだろ。




｢ねーねーAヌナ。フニのこと好きなの？｣

｢ジヌちゃん
さっきも言ったけどちょっと黙ってて。｣



と、今もしつこいジヌちゃん。

バックミラー越しに見たら
綺麗な顔をきょとんとさせて、子ウサギみたい。



｢いいじゃないっすか。
ここで決めちゃって下さいよAさん。｣

｢そーよA。フニくんはいつまでもAを好きでいてくれるわけじゃないのよ。｣




その隣には、丸い顔をニヤつかせるミノが居て

そのまた隣には、おんなじ顔したアヤが居て


仏頂面のユンは、定員オーバーのため自分の上司の車に無理やり突っ込んだけど

アウディは後部座席まで満員だ。




｢あはは！でも俺、残念ながらAヌナしか見えないんだよね。｣

｢黙れジャガイモ小僧っ！！今はやめろっ！！｣



この状態でどう素直になれってんだ。

それに、まだ少し臆病な自分が残ってる。






それでも嬉しそうなフニは

こんな私でも...




好きって言ったら、信じてくれる？

16：Maybe the perfect potato→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す