LOVE ME LOVE ME

13：A bit stupid nuna ページ38

・

指を切ったら薬を塗ればいい。

傷がぱっくり開いたら、縫って塞げばいい。



火傷をしたら冷やす。

一般常識の民間療法で、まだ冷たいままの缶ビールをほほに当てながら

焦げ目を付けた豚肉を家で1番大きい鍋に放り込み
目分量の調味料を入れて火にかけた昨日の夜



うちに来たのは弟だった。

実の姉をバカ呼ばわりすると
どうぞなんて言ってないのに勝手に入って来て

ことこと煮える鍋の中身を覗き見ながら
｢うわ、なにこの茶色。｣って。


そのあとは、ドアスコープを確認せず玄関を開けることがどれだけ不用心なことなのか

なぜか業務用の木工ボンドを持ってる弟に
延々と説教されて、ほんと面倒くさいったらない。





だって、フニだと思ったんだもん...


もしかしたら、いつもの意地悪で

ほんとはもう機嫌なんて直ってるくせに、大掛かりな仕返しで驚かそうとしたんじゃないかって

ほんとはもう拗ねてなんかないのに、フニのことだからそんな風に私を懲らしめるんじゃないかって




でも、それは都合の良い妄想。

完璧に完成したスペアリブをタッパに詰めろと言うから、結局いつもの姉弟ゲンカが始まっただけ。






友達だから、変わらないと思ってた。

フニはずっと、私の隣に居るんだって。



私はいつでもあのジャガイモを

自分勝手に都合よく振り回してたのに


それさえも気付かず

いつの間にか、都合の良い存在にしてたんだ。




あと少しで答えなのに、そこへ行く勇気が出ない。


フニと私のアンバランスなバランスを保ちながら

もうあと一歩のところで立ち止まってる。







｢え...なに？｣



そんなことを考えながら

次の日もまだ気分が重たい仕事中だった。



｢は？それどうせドッキリでしょ？
あんたね、嘘吐いたら閻魔さまに舌抜かれるよ。｣



おしりのポケットでブルブル震え続けるスマホ。

鳴り止まないコールの相手はユンで
もしもし？も言う前に、緊急事態を知らせてる。




｢...... ほんと、なの？｣

『だから言ってんだろバカA！！
フニひょんと代表が事故に遭ったんだってば！！』



だけど、その声が手から滑り落ちて



｢しっかりしろよ！！｣



床の上で騒ぐ弟の様子で状況を把握したミノが

呆然と立ち尽くす私の腕を掴んで



｢ふたりとも、乗ってって。｣



そう言ったオーナーの車のキーを預かったら

足が勝手に、フニの居る場所へ走り出していた。

▽→←▼

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す