LOVE ME LOVE ME

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｢フニー、どれがいい？｣

｢なんでもいいよ。Aヌナの観たいやつにしよ。｣



会話はまるで、甘えん坊の彼女と優しい彼氏。

けど、ほんとになんでも良かった。



｢いっつもそればっかだよね。｣

｢だってヌナとだったらなんでも楽しいもん。｣



仕事帰りに誘ったレイトショーはふたつ返事で

久しぶりだけど、映画館は初めてじゃない。



アクション、SF、ミステリー

ファンタジー、コメディ、ドキュメンタリー


戦争映画以外なら、ホラーもいけちゃう。

でも、ヌナが1番好きなのはラブコメディだ。




｢これにする。｣

｢それ観たかったやつだ。
俺たち気が合うね。付き合っちゃう？｣

｢ポップコーンいる？｣



大して悩まずヌナが指差したポスターは、子ライオンがキングに成長するアニメを実写化した映画。

ヒットを連発する会社の最新作だった。



また軽くあしらわれた告白が

今日はやけに、ずどんと重たく落っこちて


いらない、と首を振ったら

やっぱりね、と笑う彼女は知らないんだ。





なんでもいいのは ほんと。

Aヌナとは映画の趣味が合うから。


一緒なら楽しいのもほんと。

上映中は集中するスタイルも同じだから。



何より、Aヌナが好きだから

どんな映画を観ても、どんなふうに観ても


隣に居るのがヌナなら、なんでも楽しいし

なんでも嬉しいし、なんでもドキドキするけど



いつも通りにしていても

胸を覆う灰色の雲に、今日だけ邪魔されてるのは


それより気になることが、あったから。





｢あのさ、Aヌナ。｣

｢なに？席、反対のほうが良かった？｣



ううん。席なんてどっちでもいいよ。

そうじゃないんだ。そうじゃなくて...



館内が暗くなる少し前。

本当は気付かないふりして飲み込みたい。


やっぱいいやって言いたいのに

なんでもないって、言えばいいのに



｢最近、休憩時間にどこ行ってんの？｣

｢え...っと、近所のカフェとか...｣



わかりやすく気まずそうなAヌナ。

これが俺じゃなかったら
顔にも出さず、上手に誤魔化せるんだろうな。




｢わかった。違う聞き方する。｣

｢ねーフニ、もう始まるからあとに...｣

｢最近よくうちの代表と会ってるよね。｣




気になることをそのまま放置して

ひとりで悩むのが嫌いなんだ。


ギュっと唇を噛み押し黙るAヌナを見て

後悔が広がっても



そうかもしれないが、やっぱりに変わり

命中した嫌な予感を、憎たらしく思っても。

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