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ことの発端は、エドラスにすぐ帰還してからだった。
部屋に戻り、死んだように眠ろうとした時だった、不意に何かが喉元に当たった、


「誰!」

反射的に体を起こし、その主に向かって拳を振り上げるも、その主はすでにAの上に立っていた。

「…貴方は、アル。」


こんな至近距離に来るまで気がつかなかった自分を恥じるA。
だが、それ以上にアルの体は小刻みに震えていた。
それもそうだろう、外は土砂降りの雨だ。

何もいわず、棒切れを一本持ち、ほおを涙か雨かもわからない滴で濡らしていたアル。


「…とりあえずお風呂に入りましょうか。」


そう言って優しく彼女を抱き上げたA。
棒切れは呆気なく離れたものの、硬く閉ざされた口は開かない。

Aは黙ってアルの体を洗っていた。

「…どうしてここへ?って言っても、私たちよね、貴方たちエクシードから居場所を奪ったのは。」
「…」

何も言わないアルにAは黙ってアルのしたいようにさせていた。
風呂から上がり、髪の毛を乾かし、夕食をとり、就寝につく。

Aは一瞬迷ったものの、一緒に寝ましょうと言ってアルを抱き上げて、一緒のベットに入った。


暗闇の中、窓辺から見える白い月は、煌々と輝いていた。


「…この世界には月が一つなのね。」
「そうね…」

ようやく喋り出した言葉に、Aは優しく答えた。

「…私居場所がないの。」
「うん…」
「親兄弟もいつの間にかいなくなっていた。」
「うん…」
「エクスタリアにいた連中は、正直みんな馬鹿だとおもっていたわ。」
「うん…」
「馬鹿みたいに女王様って、女王様って…」
「うん…」
「私、いくあてが本当にないの。


だから…」

いままで背を向けていた彼女にAは優しい目で、うんと答えた。

「私をここに置いて。
貴方たちギルドっていうのは、チームを組んでいるんでしょう?
私聞いたの。
貴方にチームがいないのを。」
「そうね…まあ意図して組まないようにしているけれど。」
「私を、入れて…」
「チームに?」
「チームだけじゃない。

フェアリーテイルに…」

ぎゅっと背を丸めたアルにAは同情するようにそっと抱き寄せた。

身寄りのないところで、誰も頼る人がいなかったいままで。
唐突に現れたアースランドのAたちが、アルたちの今までを変えてしまったのだ。


「罪滅ぼしになるか、わからないけれど…

是非来て。」

そう言ってAは優しく笑い、アルの安心し切った寝顔を見届けた。

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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» 今度、そちらのコメントの方にお邪魔しますね。いつもありがとうございます。 (2020年1月5日 13時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» すみません、紅蓮の起死少しずつ読んでいますが、まだコメントに残せていなくて申し訳ないです。世界観が細かくていいですよね。コナンシリーズも今度みたいと思います。実はあんまりROM専じゃないというのもあって、読むスピードが壊滅的に弱いんですよね。 (2020年1月5日 13時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お忙しいかと思いますが、もし宜しければ一度見て行って下さい。紅蓮の起死が題名になっている筈なので。最近、またコナンシリーズを再度投稿しています。原作の方で灰原の正体が世良真澄に見抜かれているお話がありました。意外に、世良真澄は個人的に好きです。 (2020年1月5日 0時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 成る程。キャラの口調はキャラの特徴ですからね。私の場合は出来るだけマンガを参考にさせて貰って書いています。コナンの場合は大まかなストーリーをなぞりながら。あの、お話がずれるますが、以前こちらの状態で没にしていたオリ作の小説を投稿し始めました。 (2020年1月5日 0時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» キャラの口調とか、大まかなストーリーの流れを外さないように、一応アニメを見ながら描いています。アニメを見ながら、主人公ならこうしそうだなと妄想して、それから文章に起こしています。説明臭くなるのは、私の努力不足ですね、もっとがんばります。 (2020年1月4日 16時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イライザ | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年1月1日 12時

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