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「一つ…思い出したことがあるんだ。
エルザ、君の髪の色だ。」
そう言って顔がいい男らしく、爽やかに笑ってそのまま囚人用の乗り物に乗ってしまった。
Aは黙ってエルザの肩を引き寄せる。
「すまない…」
「いいの。」
Aはそう答えながら、抱き寄せたままエルザをそっと連れて行った。
小高い丘の上。
そこには朝日を迎えるように空がだんだんと赤くなっていた。
エルザの涙は止まらない。
もちろんAにはエルザの髪の色と言われても、何もわからない。
だがそれでも何か思い出のある髪には決して触れず、Aはエルザが泣き暮れるまでそばにいた。
「… A、」
どのくらいそこにいたかわらかなかった。
でも彼女は確かにAを見つめていた。
「楽園の塔で、何があったのか、きちんと伝えておきたい…」
その言葉に、Aはこくんと黙ってうなずいた。
Aたちが六魔戦から解放されてすぐ。
即席の最強チームに配属されていたAには、すぐに仕事が与えられていた。
しかもA本人を指名していた。
「またS級クエストに行ったんだって、A。」
フロアでふうと息をついていたルーシィは、いつもカウンターに座っているAの影を探すようにためいきをついた。
「しょうがないよ、ラクサスが抜けた今、Aがこのフェアリーテイルでは1番の出世頭になってるんだから。」
「え、いつの間にそんなことになってたの_」
ハッピーの言葉に驚いた様子のルーシィだが、確かに言われてみれば、帰ってきて休む暇もなくマスターの元に報告に行ったAはそれから一度もこのギルドに顔を出していない。
「俺たちも負けてらんねんな、ルーシィ。」
「…そうね、ナツ。
私たちもバリバリ仕事やるわよ!」
寂しさを払拭させるよう立ち上がった彼女に、ナツはニカっと笑った。
一方その頃、仕事先で一休みしていたAの元に一つの影がやってきた。
周囲のものを巻き込みながら、現れたその影にAは躊躇わず話しかけた。
ミストガン…と。
顔中をベールに包んだ彼は、Aのまえに現れ、そしてこう伝えた。
「あの時伝えたことを今実行してもらいたい。」
マスク越しに見える真剣な表情に、Aはただ見つめるだけ。
そして覚悟を決めたようにこくんと頷いた。
マグノリアの上空に不吉な黒雲が広がるまで、あと数日の出来事だった。
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イライザ(プロフ) - ベルモットさん» 今度、そちらのコメントの方にお邪魔しますね。いつもありがとうございます。 (2020年1月5日 13時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» すみません、紅蓮の起死少しずつ読んでいますが、まだコメントに残せていなくて申し訳ないです。世界観が細かくていいですよね。コナンシリーズも今度みたいと思います。実はあんまりROM専じゃないというのもあって、読むスピードが壊滅的に弱いんですよね。 (2020年1月5日 13時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お忙しいかと思いますが、もし宜しければ一度見て行って下さい。紅蓮の起死が題名になっている筈なので。最近、またコナンシリーズを再度投稿しています。原作の方で灰原の正体が世良真澄に見抜かれているお話がありました。意外に、世良真澄は個人的に好きです。 (2020年1月5日 0時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 成る程。キャラの口調はキャラの特徴ですからね。私の場合は出来るだけマンガを参考にさせて貰って書いています。コナンの場合は大まかなストーリーをなぞりながら。あの、お話がずれるますが、以前こちらの状態で没にしていたオリ作の小説を投稿し始めました。 (2020年1月5日 0時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» キャラの口調とか、大まかなストーリーの流れを外さないように、一応アニメを見ながら描いています。アニメを見ながら、主人公ならこうしそうだなと妄想して、それから文章に起こしています。説明臭くなるのは、私の努力不足ですね、もっとがんばります。 (2020年1月4日 16時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イライザ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年1月1日 12時