119 アズカバン ページ26
そうかと、呟きながらも後輩の背を見送ったアルフは、傍らに座り込んでいる小柄な少女にちらりと一瞥した。
「ほんと、誰も何も覚えてないんだなあ。
”マロニエちゃん“」
にたりと意味ありげに笑った男に、傍らの少女は億劫そうに顔を上げた。
煌めくようなアッシュブロンドは漆黒の黒髪に、淡く澄んで居たブルーの瞳は、燃えるような真紅の色に。
彼女のありのままの姿を知って居たものなら、これに驚かないはずがない。
だが幸か不幸か彼女のを知る者は今やここには誰一人として居ない、もうすでに慣れてしまった感触にAは小さく自嘲的に笑った。
「嫌味ですかそれ、というか貴方も覚えてないんでしょう。」
「まあね、でも我が家の秘密を知っている以上は放っておくわけにはいかない。」
すっと真面目な顔になったアルフに、それもそうでしょうねと返したA。
あれからというものAはアルフにべったりだった。
勿論一年差の彼である為、授業の際はAから離れなければならなかったが、逆に言えばそれ以外は四六時中Aの側にいた。
それは何も素性不明の少女を心配してのことではない。
一族にとっての汚点を、この少女が握っているからだ。
Aにバレないようにローブの影で拳を握っていたアルフは、数日前に聞かされた信じられない話に、今も尚思い返していた。
「私の素性は知る必要性はありません、ですが、貴方は一つ私と取引をしています。
貴方の杖で直前呪文をすれば全てを教えてくれるでしょう、なぜなら貴方はあの時たった一人の部外者であったドラコに忘却呪文をかけているのですから。」
直前呪文、それは呪文一つで杖の使用履歴が判明する便利な呪文だ。
いつどこで何のために、でたらめにしてはあまりにもリアルすぎるAの言葉を、アルフは無視するわけにはいかなかった。
おまけに＿＿
「私を放っておけば、いずれ困るのは貴方でしょう？
これで足りないようでしたら、他にもいろいろとお話しましょうか？」
と平然とした顔で言われて仕舞えば、逃げることもできなかった。
一族の命運をかけて、そう意気込んだアルフの徹底さは、まさにAの理想通りだった。
彼女に近づこうものなら、片っ端から追い払ってくれるし、聞かれれば知らぬ存ぜぬ。
お陰でAという存在は物の見事にホグワーツに埋もれてくれた。
「(この調子なら…)」
そう一人ほくそ笑んだ、A。
翌日にはハロウィンを控えた穏やかな朝の事だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アサノ(プロフ) - ああ、それでしたら、hp2018で開きますよ。分かりにくかったらすみません。 (2018年4月4日 22時) (
レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - branding and Loveという小説の全てにパスワードがかかっていて… (2018年4月4日 21時) (レス) id: f5c10c9f75 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - マイボードの方に来ていただければ分かりますが、どの作品でしょうか？ (2018年4月4日 21時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - アサノさんの作品でパスワードを入力しなくては見れない作品があるのですが、パスワードは教えてもらえるのでしょうか？ (2018年4月4日 21時) (レス) id: f5c10c9f75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサノ | 作者ホームページ：
作成日時：2018年3月28日 15時
