え ややこしい話 ページ35
女性らしく洋服選びに迷っているAを遠目に眺めていた小田切は、ぼんやりと思案にふけっていた。
今回の任務は所謂"尻拭い"というものだった。
日本帝国陸軍というのは、実にシンプルでそれでいて厄介な仕組みになっている。
上層部は頭の固い、自称エリートと言われるものたちが牛耳り、
下層部は優秀だが厄介払いされたものや、本当に間抜けな連中まで多種多様。
つまり何かきっかけがあれば、指示系統と実働部隊の動きに歪みが走る事がある。
数年前満州で起きた爆発事故がいい例だ。
更に話が厄介なのが、外交や政治といった小難しい"内府"のこと。
軍部の影響力が強いせいで、近年では軍の考えがまんま外交や政治に影響し始めている。
そんな中調子に乗った陸軍の上級将校がとある外人と密約を交わした。
ところがこの外人がなんと敵国に繋がるスパイであり、密約を機に機密情報が漏れていたらしい。
それならそのスパイを追い、そのスパイ網を掴み無力化すれば話は簡単なのだが、厄介なことにそのスパイには、旧知の"特別な友"がいるらしい。
"その友"と言うのが、かの有名なナチス党の議員でGestapo(ドイツの秘密警察)と繋がりがあるという。
つまり、スパイの男の言いたいことは、
"俺をスパイ扱いすればナチ党と関係がある友人が黙っていない"
暗に、外交においてなんらかの"歪み"が出来るぞと言いたいらしい。
密約を結んだ時点でややこしく、敵国だけでなく、ゴマをすっておきたいドイツまで敵に回しかねないこの異常事態。
ややこしい話が、更にややこしくなりそのスパイの男が"下手"を打たないうちに、なんとか事態を処理しろ、と言う厄介ごとがなすり付けられて来たのだ。
今回の目的は二つ、
まずはスパイ男の捕獲。
騒ぎの原因の上級将校はスパイの顔を知らないらしい。
もう一つは、事態を"隠密"に処理すること、男のスパイ網を把握、無力化又はどんな手を使ってでも阻むことが上の目的らしい。
結城中佐から引き受けた任務の"それら"を思い出し、小田切は頭が痛くなった。
今度Aを連れてパーティーに赴くのは、そのスパイ男が確実にそこに現れると言う、"確かな"情報があったからだ。
61人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時