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を Une autre personne d'espion ページ13

イェンはこの時そっと佐伯に囁いた。

「右耳のイヤリング。」
「…」

何も言わず言われた通り、イェンの右の頬に手を添えた佐伯は、そのままイヤリングをかすめ取った。
この中にマイクロチップ、つまり彼女のすべての"成果"が入ってる、と言うのを示唆している。
甘く男を酔わせる目つきをしたイェンは、そのまま佐伯の口の端に軽いリップ音をつける。

これで"イェン"は"佐伯"との密会は終了、二人は名残惜しむ様に別れた。

その後文字通り、その脚でAは夜の道を走っていた。
最後に去り際、田崎から受け取った伝言によると、南から回った港の脇のホテルで波多野は待っているらしい。
夜明けの船とともにAは波多野と共にここを去る。

という手筈になっていた、が。

ここに来て厄介な代物が現れ始めた。



「(まずい、つけられてる…)」

ダンスホールで田崎との密会中から気がついていた、誰かの視線。
それは言うまでもなく"イェン"に注がれる熱い視線。

だが、"イェン"なら分かるが、今の自分は"A"なのだ。
振り切らなければ、波多野との合流で帰還するのは断念せねばならない。
しかしそれでは今日、田崎と会った意味を成さない。


「(参った…)」

こうなったら気絶させるしか、

ある程度距離を保ったところで、ダッと振り返り、相手に向かって一部の隙もなく襲いかかった、

が、
ダアンッ

自分が逆に技をかけられ、転ばされた。
反転しようと動く前に、グイッと関節を抑えられ、背後に取られた。


『誰、』
「…」

相手は答えない。
どうする、殺す死ぬの選択肢はもとよりない。
でもここで正体をバレずに対処する方法は、

頭の中で凄まじい勢いで今後の動きを計算していると、プッと吹き出したような笑いが聞こえた。

それはよく知る彼のもの。



「…まさか、波多野なの?」
「ああ、正解。」

聞き慣れた知り合いの声。
それは同僚の波多野の声だった。
それによくよく思い出してみれば、あの靴音は波多野のモノ。
なんと情けない、同僚の気配に気がつかないとは。

がっくりと項垂れるAをよそに、技を外した波多野は、Aに手を貸した。

「ほら。悪かったな引っ掛けて。」
「…いいえ、気づかない私が悪いから。
ありがとう。」
「ああ、」

ややこしい女、
そう言いたげに顔をしかめた波多野は、Aの手を取ってそのまま歩き出した。

わ Loin et proche→←る Tryst une nuit



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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時

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