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め 第九幕〈同情か敵意か〉 ページ41

「っ、何なんだよあの女。」
「全くですね、躾がなってないというか。」

バァンッとドアを開け放って、一番に文句を言ったのは波多野と実井だった。
部屋には苦笑顔のAと、我関せずと煙草を吸っている三好の二人。
ここ最近、毎日交代制で担当しているのは、Aと小田切が捕まえて来た女スパイだ。
機関員で全員で面倒を見ろ、というのが結城中佐のお達しで、それがなければ今頃全員放棄している。
それ程"厄介"な女だった。

「また色仕掛けを?」
「ああ、あの野郎いきなり…しかも下手!」
「殿方にそれを言われたら終わりですね。」
「無駄話もそろそろにしていきましょう。」
「了解です。」

カタンと立ち上がった三好とつられるA、すると実井が歩み寄りそっと耳打ちする。

「気をつけてください、あの女、特に貴女には好印象を抱いていないようですから。」
「…肝に命じておきます。」

やれやれと肩を竦め、三好の後ろに続いたAは数日前のことを思い出していた。

身柄を捕獲した女スパイは、信じられないという目でAを見ていた。
それもそうだろう、事前の調査をした女が、"同業者"だったとは夢にも思うまい。
しかもあそこまで目立っておきながら、同業者?馬鹿にしてる、
何度もそう罵倒の言葉を食らったAは、少し憂鬱になる。

薄暗い地下の扉を開けると、椅子に座りぐったりとしている"同業者"が。
色素の薄いブラウンの髪は乱れ、色白な肌は不健康そうに土気色に変わっている。
唇は乾ききり、手足の筋肉は必要以上に落ちている。

壊すつもりなど微塵もないが、機関員達の言葉を無視して勝手に自滅の路を歩んでる。
三好自体も顔には出さないが、面倒そうな雰囲気を醸し出している。

部屋に踏み込み、同業者の名を呼ぶ、するとゆっくりと振り返ったその顔は死人のように真っ青だった。

「何よまたあんたなの?
ねえあんたいいよ、どっか行って。
そこのお兄さんとだけ話したい。」

深いダーク色の目が恍惚におかしく輝く。
嫌悪感を隠す気の無いらしい女を前に、ありありと顔に出している三好に溜息を吐き、女の元に歩み寄るA。

「三好、少し出てもらえます?」
「は?何言っちゃってんの?!!」

三好は無言のままAを見つめ、こくんと頷き出て行った。
ばたんと静かに戸が閉められ、中には女が二人っきり。

「あんたどういうつもりよ!!!」

此の期に及んでまだ歯向かう女スパイに、ニコリと怪しく微笑むA。

み 同業者の涙→←ゆ スパイとは女とは



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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時

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