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く 閑話 甘い煙は消え失せる ページ29

Aは呆れた様にふうっと僅かに息を零して、困った様な顔をする。

「実井もですか、二人してどうしたんです?」
「眠れないんですよ。」
「あはは面白い冗談ですね、そんなたまじゃないだろ。」
「喧嘩するなら外に出てくださーい。」

付き合ってられない、
そう言いたげに実井の隣を通って行ってしまうAを止めたのは実井。
ニコニコと笑っているときは何か企んでいると決まっている。
なんのつもり、密かに身構えたAに実井はさもなんでもない様に、Aの煙草を奪ってしまった。

「ちょっと、」
「女性が嗜むものとは思えませんが。」

チラッと意味ありげに三好に一瞥くれた後、すうっと煙草を咥え一服する。
その様に唖然とする二人。
三好に至っては煙草を落としたことに気がついていない。


「おや三好さん、もう煙草はいいんですか?
まだ半分残ってますが。」

カツンと踏み混んでAの隣に佇む実井。

誰のせいで落としたと、そう苦々しげに実井を睨み、二人を横切ってドアの前まで歩く三好。
足取りは心なしか煩い。

ドアまで歩いたところで、振り返った三好は何かいいかけて、被りを振って立ち去った。
それを見送ったAは心底不思議そうに尋ねた。

「結局なんだったんでしょうかねえ。」
「さあ、なんとも。
ああそれと言おうと思ってましたけど、タメ口で結構ですよ。
そっちの方がAっぽいですし。」
「あら私らしいとはどういうこと?
それに言葉遣いなら実井、貴方もその仰々しい喋り方を辞めたらどうです?」
「この顔で暴言を吐く方が想像しづらいでしょう?」
「わぁ、よくわかってらっしゃることで。」

皮肉たっぷりに言ったところで実井には痛くも痒くもない。
呆れた様に実井を見つめたAは、仕事があるから、と言った後付け足すように、おやすみなさい、と声をかけて立ち去った。

実井は無言でそれに答え、Aも三好同様出て行ったのを見届ける。
その後徐に歩き出し、三好の落とした吸い殻を踏みつけ、拾い上げた。

「…」

躊躇なくつまみ上げたそれを、ぽいっと真っさらに綺麗にされた灰皿の中へ吸い殻を放り込み、自分の吸っていた煙草も押し付ける。


「全く…女性に持たせるものではありませんよ。」

よく響いた独り言は誰に聞かれまでもなく、煙のように消え去った。

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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時

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