空に光る星 2

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「羽生君、ショート凄かったね！史上最高得点だって！明日のフリ―次第じゃ、合計300点越えも夢じゃないかもね！？」

　昨日の羽生君のショートプログラムを見てエイ子が興奮しながら電話してきた。

　私も、そうなる事を願っていた。

　それが―――

　誰が、こんな結果になると予想していただろう…

　世界中の誰もが、フリ―の羽生君の完璧な演技を信じて疑わなかったはずだ。

　結果は合計280.09。

　300点には程遠い数字だった。


　羽生君の夢にまで見た金メダルがこぼれ落ちて行く。

　触れようと思えば触れられるほど近くにあった金メダルが遠ざかって行く。

　なんと言葉をかけよう…？

『ショートは史上最高得点だったし胸張って！』

『銀メダルでもスゴイことだよ？』

　そんな薄っぺらな褒め言葉は今の羽生君にはむごすぎる。

　あんなに頑張って練習してきたのに…

　血のにじむような、苦しい練習をこなして来たのに…

　そう思うと涙を流さずにはいられなかった。




　オリンピックには魔物が棲んでいた―――――


　羽生君とメダル争いをしていた選手の様子がへんだ。

　ジャンプに精彩を欠いている。

　メダルの重圧。

　国の期待というプレッシャー。

　オリンピックにはやっぱり魔物が棲んでいたのだ。


　一度は諦めた金メダルが羽生君の手のひらに転がり落ちて来た。

　オリンピックの神様は羽生君に微笑んだのだ。


　悔しいはず…

　悔いの残る演技だったはず…

　それでもフラワーセレモニーでの羽生君の笑顔は晴れ晴れとしていた。

　嬉しそうに微笑む羽生君の目線の先は、きっと次のオリンピックに向いている。

　ソチに置いてきた300点は次のオリンピックで―――

　私はそれを応援しよう。

　影に日向になりながらずっと支え続けよう。

　そう心に誓った。





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