伍拾捌 ページ10
目が覚めて、庭に出てみるとそこには無一郎くんがいた。
昨夜見た彼は幻ではなかったのか…。
『あ、あの……無一郎くん?』
無一郎くんはゆっくりと振り返る。
時透「あ、Aだ。久しぶり。」
『えーと、昨日も会った……よね?』
時透「え、そうなの?ごめん。僕すぐに忘れるから……」
忘れたとかそういう問題ではなくて私が視界に入っていなかっただけじゃないかな?
ま、いいや。
時透「ていうか、また包帯だらけじゃん……。」
無一郎くんは私の袴の隙間からところどころ見える包帯をじっと見て不機嫌そうに言った。
『あー、うん。ちょっと色々あったんだよね……』
時透「へぇ、じゃあ今は療養中なんだ。僕も今日暇なんだよね。僕と出かける?」
『そうだね、深く考え込みすぎるよりも気分転換した方がいいのかも』
二人で甘味処へ行くことになった。
わたしの好物がお饅頭と知っている彼はお店に連れてきてくれた。
気が利くなぁ、私より3歳も年下ってことを忘れそうになる。
『ん〜、美味しい……幸せ……』
『あ、でも無一郎くんは甘いもの好きだったっけ?』
時透「別に好きでも嫌いでもない……」
と、言いながらも彼は草団子をもしゃもしゃと食べている。
無言で団子を口いっぱいにほうばって食べる様子は、年相応だった。
子供にしては以上に強く、いつも無口で無愛想と思われがちな無一郎くんだから、レアなところを見れて嬉しい。
少し見すぎたようで、彼と視線が会ってしまったから逸らすでもなく普通に笑ってしまった。
『えへへっ』
しかもちょっと気持ち悪い笑い声がでてしまって焦る。引かれたかも……
時透「ふふっ、Aの笑い方、なんか変……」
引かれた……けど、笑い返してくれた。こんなに表情豊かな彼を見るのは初めて。
ふと、兄妹を思い出す。妹が生きていたら、無一郎君と同い年に当たる。いつか、天国で会えたなら、私を許してこんなふうに笑いかけてくれるといいなぁ。
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渚月華 - 面白いです! (2020年5月2日 11時) (レス) id: bd22a3d64d (このIDを非表示/違反報告)
氷壊寺礼(プロフ) - 何…?!「既に投票済みです」だとぉ… (2020年4月11日 21時) (レス) id: ecbea78122 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - どうもです。ココさんの言う通り「舞」ではなく「雛」です。更新お忙しいと思います。誤字脱字は他の読者様が気になる方がいらっしゃると思いますので一応指摘してきます。すいません。 (2020年4月11日 19時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
ココ(プロフ) - とても面白いです!宇随さんのお嫁さんの名前は雛鶴さんだと思います! (2020年4月9日 19時) (レス) id: f80ae667a5 (このIDを非表示/違反報告)
ろんちゃん - 面白です!これからも更新頑張ってください! (2020年4月9日 18時) (レス) id: fc640f7e8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なるは。 | 作成日時:2020年2月22日 22時