漆拾伍【記憶の夢】 ページ28
夢を見た。
その夢に自分は存在しないし、干渉できない。
目の前でお話がどんどん進んでいく。まるで映画を見ているようだった。
そこは古いけど立派な屋敷だった。その屋敷で床に伏す病弱な男が一人。
その男の薬を処方しに来た薬師がいた。
なんでこんな夢を私が見るのか分からなかった。いつの時代なのかも分からない。
だけど、薬師の女性の髪色や目の色はどこかで見たことがあるような気がした。
《月彦様、お薬を処方しに参りました。》
薬師の女性が襖を少し開けた。
月彦と呼ばれた男は布団で横になり、目を閉じたまま返事をした。
《麗か、入れ》
そこで私は気がついてしまった。“麗”という名。近頃、聞き飽きた名前だ。
何故、あったことも無いはずの彼女の容姿に見覚えがあったのか。親近感をおぼえたのか。全て分かってしまった。
私だからだ。
紺色の長い髪に蒼い瞳。よく見れば、顔立ちもどことなく私に似ている気がする。
強いて言うなら私の髪はそんなにサラサラのストレートではないけれど。
どうしてすぐに気が付かなかったんだ。
そして、彼女が私の前世の“麗”という人だとしたら、
月彦と呼ばれたあの男は……人間の頃の鬼舞辻無惨だ。
『はぁっ……はぁ、はぁ』
手が動かせる。自分の荒い呼吸音が聞こえる。
夢から覚めたのか。
あれが、私の前世……?鬼舞辻の言っていたことは本当にただの事実だった。
本当は少し怖かった。
前世なんて思い出してしまったら、鬼殺隊としての覚悟や決意に揺らぎが生じるのではないかと。
だけど今も、鬼は殺さなければならない存在であるという認識は変わらない。
このことに少しほっとしているのだ。
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渚月華 - 面白いです! (2020年5月2日 11時) (レス) id: bd22a3d64d (このIDを非表示/違反報告)
氷壊寺礼(プロフ) - 何…?!「既に投票済みです」だとぉ… (2020年4月11日 21時) (レス) id: ecbea78122 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - どうもです。ココさんの言う通り「舞」ではなく「雛」です。更新お忙しいと思います。誤字脱字は他の読者様が気になる方がいらっしゃると思いますので一応指摘してきます。すいません。 (2020年4月11日 19時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
ココ(プロフ) - とても面白いです!宇随さんのお嫁さんの名前は雛鶴さんだと思います! (2020年4月9日 19時) (レス) id: f80ae667a5 (このIDを非表示/違反報告)
ろんちゃん - 面白です!これからも更新頑張ってください! (2020年4月9日 18時) (レス) id: fc640f7e8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なるは。 | 作成日時:2020年2月22日 22時