九 ページ9
今年もまた粉雪が、山の背を白く染める。
真白く染まった景色の中を、俺はいつもの様に山へと歩く。
雪原に一人足跡を刻みながら歩いていると、懐かしい羽ばたきの音が聞こえた気がして振り向いた。
向いた先に、一羽の美しい鶴が佇む。
一目で、君だと分かった。
夢か現かも分からぬまま、慎重な足取りで君に近づく。
すっかり抜け落ちてしまっていた羽は、この一年ですっかり生え揃ったらしく、初めて会った日そのままに、美しく艶やかだった。
「彩」
君まであと数歩というところで、俺は君の名を呼ぶ。
するとその瞬間、君の体が淡い光に包まれたかと思うと、するりと姿を変えた。
鶴から、美しい、娘の姿へと。
白無垢のように真白い衣に身を包み、胸に手を当て、祈るような瞳で俺を見つめながら、君が囁く。
「いまでも、私を、愛してくれますか?」
ああ、そんなの、答えは決まっている。
俺は笑い、そっと答えを囁いて、君を抱きしめた。
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夢美 - 絵凄く上手でした。 (2019年8月1日 11時) (レス) id: 32185305c0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 鶴の恩返しですか?面白かったです!!! (2018年11月27日 21時) (レス) id: afa6322ad5 (このIDを非表示/違反報告)
notリア充 - 絵が凄い上手ですね!お話しも凄く良かったです。黒彩良いですね最近は上彩ですがやっぱり黒彩も捨てがたいなあ (2018年11月24日 19時) (レス) id: fb8a1e68c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀 | 作成日時:2018年11月23日 18時