その優しい表情に ページ8
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裕一郎の唐突なカミングアウトに私達三人はただただ驚いた。
店に着いて、江口さんと根掘り葉掘り聞かれて最後は「二人が幸せなら俺も幸せだよ〜」と泣いていた。
西山は「わかりますぅ」と嘘泣きをしていた。
帰り道、二人で歩いてもうすぐ家に着く辺りでいつも私が先に歩く。その数メートル後ろに裕一郎が歩いてるけど、今日はその距離が離れることはなかった。
帰宅してお風呂に入り、髪を乾かそうと思って洗面所に行ったら裕一郎も着いてきた。
『どうしたの?』
「あのさ、話さない?事務所に」
『急にどうしたの?』
「我慢してるの辛くなった。勘づかれたらダメと思ってAの話出来ないし。俺の毎日なんてほぼほぼお前で出来上がってるのに」
それは私もそう。
だったらそれでもいいんじゃないか、世間に公表するかどうかは置いといて事務所に話しても、と。
『でも仕事減ったりしたらどうしよう』
「その心配はあるけど、これからもっと実力つけていけばいい」
『そっか、そうだね』
「じゃあ結婚しようか」
『うん、そうだ…え?えぇ!?』
「なに驚いてんの」
今結婚って言いましたか!?
驚いて手に持ってるドライヤーを落としそうになった。寸前に裕一郎がキャッチしてくれたけど。
「今日忘れたの?」
『今日?』
「付き合い始めた記念日。毎年俺が忘れるから覚えとけって怒ってたじゃん去年」
『そうだった…すっかり抜けてた』
「お前が忘れてんのかよ」
キャッチしたドライヤーの電源をつけて、そのまま髪を乾かしてくれた。暖かい風が心地良い。
『本気で言ってくれてるの…?』
「うん。本気」
『嬉しい…』
「かと言って籍入れるのがすぐって訳にはいかないだろうけど、俺は結婚したいって思ってる」
『私もしたい、裕一郎とずっと一緒がいい』
「じゃあ明日事務所行くか」
『そうだね』
鏡越しに見える裕一郎の表情がとても優しくて、なんだか泣きそうになった。ブサイクな泣き顔を見られたくなくて後ろを向いて抱き着いた。
「なに、後ろ髪乾かすのにこっち向かなくていいしそんな引っ付かなくていいんだけど」
『うるさい』
「こわ」
『裕一郎の顔が優しいのが悪い』
「はいはい」
同い年なはずなのに、なんでこうも包み込んでくれるのが上手いんだ。ぎゅっと抱き締める腕に力を込めたら「苦しい」と、ドライヤーで頭を軽く叩かれた。痛い。
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p@n@(プロフ) - のぞみさん» コメントありがとうございます。このお話に関しては、続きは作っておりません…今書いてるものが完結したら、似たようなお話にはなってしまうかもしれませんが、梅原さんとのお話を書く予定です!コメントして頂いたのに申し訳ございません。 (2021年5月29日 10時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 面白いです。続きはないんですか? (2021年5月29日 8時) (レス) id: 90a3a483bc (このIDを非表示/違反報告)
chimo(プロフ) - 永遠に幸あれ完結お疲れ様でした!とてもほっこりして素敵な作品でした!次回作西山さんということで楽しみにしておりました!引き続き愛読させて頂きます! (2021年1月31日 16時) (レス) id: f2165dc798 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - めちゃくちゃドッキドキやな…って感じです。ありがとうございます…… (2021年1月25日 23時) (レス) id: e5cbfbc5c1 (このIDを非表示/違反報告)
p@n@(プロフ) - さきさん» コメント、リクエストありがとうございました!!書いていてとてもドキドキしました……これからもよろしくお願い致します! (2021年1月25日 23時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:p@n@ | 作成日時:2021年1月9日 0時