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ある日の夜、父は寝室に私を連れ込んだ。私の服を脱がせて、裸にした。それでいつも女の人とやっていたことをした。痛かったし、気持ち悪かった。でも、父は途中から泣き出して、女の人の名前を呼び始めたから、可哀想だなと思った。私はもう女の人の顔を忘れたのに、父はまだ忘れられないんだろう。それからも父は、何度も同じ行為を繰り返した。未だにたまに泣いている。早く忘れればいいのにと思う。

中学に入ったら、いじめは更にひどいものになっていった。暴力を振るわれるようになって、給食にゴミを入れられるようになった。あるとき朝来ると机がなくなっていたのに、担任は何も言わなかった。今日はサボろうと思ってサボったら、何故か担任に怒られた。私の机を取ったやつは怒らないんですか、と言おうとしたが、めんどくさかったからやめた。

そしてある日、いつも通りの登校中に道端に何か落ちているのを発見した。珍しく惹かれてしまって、しゃがんで手に取ってみた。それは文庫本だった。

『普通であること』

衝動的にページ開いた。それは自叙伝なのか、はたまた創作なのかは分からなかったけれど、その本の主人公はとても私によく似ていた。本を読むことは面倒くさかったから、自ら進んで本を読んだことはなかったけれど、これは違った。学校にいくのも忘れて、私は物陰に身を潜めた。どんどんページが進んでいく。目が文字を追って離さない。そして、とあるところで手が止まった。

『僕は普通じゃなかった』

『父から暴力を受け、学校では同級生から暴力を受けている僕は、全く普通なんかではなかったのだ』

『僕の普通が歪んでいただけで、社会から見るとそれはとてもずれていた』

『でも、僕からすればそれが“普通”だった』



『だって僕はそれしか知らなかったから』




「____!」

まるで、頭をガツンと殴られたような衝撃だった。パタン、と本がコンクリの上に落ちた。手がブルブルと震える。喉がヒュウ、と鳴ってうまく息ができない。そこまで寒くもないのに、歯の根が合わないほど恐怖に震えていた。何だろう、この気持ちは。途端に何かが欠落したような気がした。どうしようもない虚無感と、絶望感。何だろう、何だろうこれは。えもいわれぬ感情に支配され、ただただ震えることしか出来なかった。すると、とある言葉が口をついて出た。

「…………もう死のう」

その言葉は、多分私の人生の中で唯一の正解だった。

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設定タグ:おそ松さん , 松野おそ松 , シリアス   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:はむめろん | 作成日時:2018年8月14日 15時

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