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その日を境に、俺にとって『兄弟』だった存在はいつしか『弟』に変わり、弟たちも俺のことを『兄』として見るようになった。そして反抗期に入り、荒れ始めた俺達の中で一番怒られるようになったのは、『長男』である俺だった。でもよく怒られたのは俺が長男だからじゃなくて、一番荒れてたからだと思う。一番ケンカしたのも、授業バックレたのも、夜遊びしたのも、きっと俺が一番多かったから。なのにそのときは、ふざけんじゃねえ、ほんの少しあいつらより早く生まれただけで責任取らされるような真似されてたまるか、と更に荒れた。今考えてもすげえやんちゃしてたなあって思う。

でも荒れたのは、きっとそれだけが理由じゃなかった。

『カラ松! 放課後遊び行かね?』
『すまない兄貴。今日は部活なんだ』

『おっ、チョロ松ぅ〜。一緒に購買行こうぜ』
『ごめん、僕、生徒会の仕事あるから』

『一松〜、どっか行こうぜ』
『……猫のところ行くから、ごめん』

『おっ十四松! ゲーセン行こうぜー』
『ぼく、これからやきうしてくるから、兄さんゴメーン!』

『なあトド松、駄菓子屋行かね?』
『あー、ボクこれから女の子達と遊びに行くからパス』

高校に入った頃から、俺の弟たちはそれぞれ別の居場所を作るようになった。それもあってか、六人で過ごす時間は次第に減っていき、俺の誘いも簡単に断られるようになった。でも別に俺にもちゃんと友達がいたから退屈はしなかった。けど、ふと、他の居場所で楽しそうにしている弟たちを見たとき、

(あれ? 俺には何もなくね?)

そう思った。よく考えたら、弟たちは自分の好きなことを見つけて打ち込んでいるのに、俺には、俺には何もなかった。

そうだ。そうだ、俺には何もない。俺だけが空っぽ。俺の居場所は『ここ』だけしかない。そんな不安と焦燥をかき消すかのように、俺は手当たり次第にケンカをしまくった。たまにはあいつらと一緒にしたりもした。けど、残るのは、傷と、喪失感だけ。ただそれだけ。でもそれを分かっていてもなお、止めることは出来なかった。怖かったから。すごく、怖かったから。他のことで頭をいっぱいにしていたかった。

『……あきた、やーめた』

でもそんなケンカも、飽きてしまったからやめた。これで一番荒れていた時期は終わったんだけど、心の底ではいつもどこか怯えていた。

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設定タグ:おそ松さん , 松野おそ松 , シリアス   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:はむめろん | 作成日時:2018年8月14日 15時

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