. ページ12
「……死のうかな」
何気なく呟いた言葉は、俺にとって答えだった。
俺には弟が五人いた。弟と言っても、六つ子だから年齢は全員一緒。しかも一卵性だから、みんな同じ顔をしている。それも、母さんでさえ俺達のことを間違えることがあるほど。だから昔から近所では有名だったし、何をするにも六人一緒。『俺があいつで俺達が俺』なんて、今考えると懐かしい。
本当に、何もかもが一緒だった。けど、それも少しずつ変化していった。
中学に入って少しした頃、持ち物を色で分けることになった。母さんが『みんなで相談して決めなさい』って言ったから、俺達は六人で六色のパーカーを黙りこくって見つめていた。俺は何色がいいんだろう。何色が似合うんだろう。すると、チョロ松が口を開いた。
『やっぱ、おそ松は“赤”だよな』
『は? 何でだよ』
俺がそう聞き返すと、チョロ松はさも当然かのようにこう言った。
『だって赤はリーダーの色だろ?』
『____!』
リーダーの、色。それを聞いた瞬間、俺はなんとも言えない感情を覚えた。
『みんなもおそ松が赤でいいよな?』
『僕もそれがいいと思う!』
『ぴったりの色だよね〜』
『賛成』
『いいんじゃないか?』
他の兄弟も口々にこう言う。俺が、リーダー。こいつらの、リーダー。俺はみんなに認めてられてる。俺はみんなに頼られる存在なんだ。そして俺は赤色のパーカーを高々と掲げた。
『だよなー! やっぱ赤って俺のためにあるような色だし?』
『いや、別にそこまでは言ってねえし』
『調子乗りすぎ』
チョロ松とトド松の冷ややかな視線も気にならないほど(日常茶飯事だったってこともある)、俺の気分は高揚していた。リーダー。俺がリーダー。そのときは、ただただ嬉しかった。
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はむめろん | 作成日時:2018年8月14日 15時