検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:1,166 hit

. ページ12

「……死のうかな」

何気なく呟いた言葉は、俺にとって答えだった。

俺には弟が五人いた。弟と言っても、六つ子だから年齢は全員一緒。しかも一卵性だから、みんな同じ顔をしている。それも、母さんでさえ俺達のことを間違えることがあるほど。だから昔から近所では有名だったし、何をするにも六人一緒。『俺があいつで俺達が俺』なんて、今考えると懐かしい。

本当に、何もかもが一緒だった。けど、それも少しずつ変化していった。

中学に入って少しした頃、持ち物を色で分けることになった。母さんが『みんなで相談して決めなさい』って言ったから、俺達は六人で六色のパーカーを黙りこくって見つめていた。俺は何色がいいんだろう。何色が似合うんだろう。すると、チョロ松が口を開いた。

『やっぱ、おそ松は“赤”だよな』
『は? 何でだよ』

俺がそう聞き返すと、チョロ松はさも当然かのようにこう言った。

『だって赤はリーダーの色だろ?』
『____!』

リーダーの、色。それを聞いた瞬間、俺はなんとも言えない感情を覚えた。

『みんなもおそ松が赤でいいよな?』
『僕もそれがいいと思う!』
『ぴったりの色だよね〜』
『賛成』
『いいんじゃないか?』

他の兄弟も口々にこう言う。俺が、リーダー。こいつらの、リーダー。俺はみんなに認めてられてる。俺はみんなに頼られる存在なんだ。そして俺は赤色のパーカーを高々と掲げた。

『だよなー! やっぱ赤って俺のためにあるような色だし?』
『いや、別にそこまでは言ってねえし』
『調子乗りすぎ』

チョロ松とトド松の冷ややかな視線も気にならないほど(日常茶飯事だったってこともある)、俺の気分は高揚していた。リーダー。俺がリーダー。そのときは、ただただ嬉しかった。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (4 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:おそ松さん , 松野おそ松 , シリアス   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:はむめろん | 作成日時:2018年8月14日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。