月を恐れる狼と魔女２【ハリー・ポッター】 (ページ23)

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トンネルを抜けると、外はすっかり暗くなっていた。
みな無言でひたすら校庭を歩いた。

空を見上げると満月が登っていた。

『満月…。リーマス！』

時すでに遅し。リーマスは硬直していた。そして、手足が震え出した。

｢逃げろ＿逃げろ！早く！
私に任せて逃げるんだ！Aも早く行きなさい！｣

リーマスの苦痛の籠った唸り声＿リーマスの頭が長く伸び、体も伸びる。背中が盛り上がる。

私は初めてリーマスが狼になった姿を見た。これまでリーマスは、私にその姿をずっと隠し続けていた。私を傷つけないために＿。

私の大切な人は苦しんでいる。自分に何ができるか分からない。ただ、リーマスは皆を傷つけてしまうことは絶対に望んでいない。ならば、私は出来るだけお城から遠くの場所に導けば…

シリウスは犬の姿になって、牙と牙とががっちりと噛み合い、鉤爪が互いを引き裂きあっていた＿。

『アクシオ私の杖！』

シリウスに貸していた自分の杖を呼び寄せた。
そして私は注意を私に向けるために、近くにあった岩に向けて呪文を唱えた。

『レダクト！リーマス、こっちに来て！』

｢A、危険すぎる！辞めるんだ！｣

ハリーがそう叫んでいたが、私はそれを無視して禁じられた森の奥に向かって全速力で走り続けた。

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息が苦しい…。体力の限界を感じていた。しかし、走るのを辞めることが出来る状況ではなかった。

『っわ!!』

足がもつれて転んでしまった。狼になったリーマスが私に噛み付こうとした。それを間一髪で避けるが、その直後に鋭い鉤爪が私の首を狙って切り裂こうとしてきた。＿ヤバい。私はこのまま死んでしまうのだろうか。そう思った時、私の杖が満月から降り注ぐ月光を吸収し、私とリーマスの間に光の壁を作った。

リーマスは弾き飛ばされた。何が起きたのか理解が追いつかない。近くの木の根元に座り、息を整える。

『…杖が私を守ってくれたの？』

杖に聞くが返事はない。まぁ、それが当たり前なのだけど＿。ふと前を見ると、リーマスが倒れていた。狼になったままだけれど、スヤスヤと眠っている。リーマスの体を見るとあったはずの傷が全て無くなっていた。

『これが、癒しの力…なのかな。』

私はリーマスの傍でホッキョクギツネの姿になり、丸まって眠った。