年上の婚約者【赤司征十郎】

年上の婚約者　２８。 ページ32

-赤司side-







「ねぇ、これからは名前で呼んでよ。」




だって、二人で出掛けたのに、
何も進展がないと寂しいじゃないか、

と、俺は照れを隠しながら言った。



そうすると、彼女から「いいですよ」なんて嬉しい言葉が返ってきた。


可愛い照れ笑いつきで。






そんな彼女の反応に、心の中では悶えながらも、俺はこう続けた。







「それなら、俺はこれからAって呼ぶよ。」



「わかりました。じゃあ、私は……『征十郎』…では長いですし…、」




そして彼女は少しだけ考える素振りを見せ、









「……征君…………でもいいですか？」

俺は心配げな顔をしてそう言った彼女に良いよ、って言葉を返した。




その言葉が彼女は嬉しかったようで、えへへ、何て声を漏らした。







ここはあるホテルの一室。

通称『ラブホ』である。






でもよく見かけるような目にいたい装飾はなく、
ただの一流ホテルのようにも見える。






……まあそうでもなければ彼女も俺も、ぎくしゃくしていたのでは、
とも思うが。





俺達は夕食を食べ終わり、
ソファーに座って寛いでいた。






「そろそろ遅くなってきたね」



俺がそう言うと、彼女は顔を赤くしながらも、



「私、先にシャワー浴びて来ますね」


と言った。







そして彼女がシャワールームへ歩き出した時…、




プルルルルルルル………




あまりにも無慈悲な機械音が聞こえてきた。


まさか、嘘だろう？


こんなときに…。

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