伯爵家は今日も騒がしい！２【オリジナル】 (ページ11)

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十一話馬車での旅ページ11

馬車に揺られ、向かうはアンダーソン公爵領。伯爵領とは距離があるため、泊まりがけで向かっている。

(どうしてここに私が……)

朝からこのことで頭がいっぱいでずっとこの調子だ。

クラリス様が突拍子もない発言をしたあの日、あろうことか私の同行が決定してしまった。
いくらなんでも荷が重すぎる、とミリアさんに事の詳細を聞いたところ、

『他家の使用人から学ぶのも大事よ。まあ、一年って契約だけどこういうことってあまり経験できないからいい機会でしょ？ソフィアさんも結構慣れてきたみたいだし、予想以上に上手くやってるからあっちでも平気よ。え？旅費？全部伯爵家で出してくれるから大丈夫。使用人一人増えたくらいで崩れる伯爵家じゃないわ』

といった様子で、一人増えたところで何も問題なく、クラリス様とアルバート様から推されて了承したそうだ。

「ずいぶん憂鬱そうな顔してるな、ソフィア」

向かいのアルバート様がニヤッと笑って言った。私の隣のグレンさんは今日も無表情だ。
私はアルバート様とグレンさんといっしょの馬車に乗っている。クラリス様とエマさん、エヴァンくんと他の騎士さん一名で一台の馬車に、ロナルド様と専属執事のテオさん、騎士さん一名がもう一台の馬車に乗っている。

「そりゃそうですよ。私には荷が重すぎます。なんでこんなこと提案したんですか」
「そんなの、言い出しっぺの姉さんに聞いてくれ。俺は道連れする気満々だったけど」
「道連れって……」

確かにあの場でお茶会に行かないのは私だけだったが、厄介事には巻き込まないで欲しい、本当に。

「そういえば、他に受ける招待状は決まったんですか？」
「いや、まだだけど？」
「なんでそんなに自信たっぷりなんですか……次、こういうことがあっても私は同行しませんか……っ！」

突如、馬車が大きく揺れて思わず椅子から転げ落ちそうになる。すると、腰を掴まれ、グイッと引き寄せられた。

「大丈夫ですか。気をつけてください」
「ありが……とうございます」

見上げると思ったより近くにグレンさんの顔があり、驚きと恥ずかしさで言葉が尻すぼみになる。顔に熱が集まるのが自分でもわかった。

「……あなたは危なっかしいんですから、あちらではできるだけエマといっしょにいてください。……まあ、自分とでもいいですけど。とにかく、一人にならないようにしてくださいね」
「はい……」

腰の手が離され、私はいそいそと元の場所に戻る。顔の熱はまだ引かなかった。