十話 突拍子もない思いつき ページ10
「うっ、うっ……あんな量覚えらんないわよ……なんでよりによって公爵家なの……どんだけ人来るのよ……」
いつものティータイム、クラリス様はここ最近そんな調子だ。エマさんも鬼ではないらしく、休憩時間としてこの時間は許されているそうだ。
「いつまでも愚痴らないでよ、姉さん。せっかくの休憩時間なのに」
「こっちの苦労も知らないお子様は黙ってなさいよ!」
「そっちの要領が悪いだけだろ」
再び喧嘩になりそうな二人をまあまあとなだめる。少しでも明るい雰囲気にしようと私はエヴァンくんに話しかけた。
「そ、そういえば、エヴァンくんもお茶会に行くんだってね。護衛として」
「そうそう。まあ、公爵家だし危険もないだろうけどいい機会だからさ。領地の外の仕事にも慣れておけって父さ……隊長がね」
「そうなんだ〜いいな〜。公爵様のお茶会だったら絶対豪華だし、ご飯もお菓子も食べ放題じゃない」
「そりゃあそうだろうけど、護衛騎士はそんなことできないよ。仕事しなきゃね」
ロナルド様、クラリス様、アルバート様とその専属使用人、そしてエヴァンくんと何人かの騎士の方々でお茶会に参加するそうだ。つまりは私を除いてここの三人は皆参加するわけで。ド平民あがりの私には縁のない話だけど、お貴族様のお茶会ってやっぱり憧れちゃう。想像をふくらませながら話していると、クラリス様が突拍子もないことを言い出した。
「そうよ。ソフィアもいっしょに行きましょうよ!」
「え゙」
「エヴァンも経験積むためにいっしょに来るんでしょ?ソフィアも同じよ!いずれは使用人の地位も上がって、他家のパーティに行くこともあるでしょう!きっと!いや、あなたなら絶対!」
「いやいやいや、それはないですって!」
「そうだよ、ソフィアも来てくれよ。お菓子分けてあげるからさ」
「ちょ、アルバート様!?」
何を言い出すんだこの人達は。だいたい私は一年で辞めるんだから地位が上がることも無いし、お菓子で釣られるような人間じゃない!それに、こんな使用人ど素人が公爵様のお茶会に行ってもいいのだろうか?いや、よくない!
嫌だ、行かない、と反抗するも彼らは全く聞く耳を持たない。
「そうと決まれば、交渉しに行くわよ。着いてきなさい、アルバート!」
「了解!」
(ああ、なんでこんな時だけ仲がいいんだあの人たちは……)
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作者名:お芋 | 作成日時:2019年10月16日 21時