四話 試合前 ページ17
再び鍛錬場の中に入ると、騎士の皆さんが集まっていた。まるでそびたつ壁のようで前が全く見えないが、誰かが皆に呼びかけるように喋っていた。
「今日はアルバート様自らいらっしゃって皆と手合わせ願いたいそうだ。手合わせを希望する者は今から十分後、先着順に試合を開始する!」
途端にざわつき始める室内。息巻く者、苦笑いする者、他の人に出ることを勧める者、不思議そうな顔をする者と反応は様々だ。
「エヴァンくんは試合するの?」
「うーん、おれは空きがあったらでいいかな」
そう言うと彼は頬をかいて笑った。
△▼△▼△▼
試合準備の間、私は椅子を勧められ、エヴァンくんはその隣で壁にもたれて話をしていた。
「エヴァンくんってアルバート様とずいぶん親しい感じだよね」
「ああ。クラリスの弟だから小さい頃から一緒に遊んでたんだ。弟みたいに思ってるし、今更畏まるのもなんか変だし」
「なるほど。だから敬語使ってなかったんだね」
先程見た二人は本当に兄弟のようだった。
「ソフィアとアルバートは?そっちも仲良さそうだったけど」
「うーん……私たちはなんだろう?茶飲み友達?みたいな?」
「なんだよそれ」
そう言うとエヴァンくんは笑った。私もつられて笑う。するとそこに準備の整ったアルバート様がやってきた。
「あ、アルバート。そろそろか?」
「ああ。いいか、ソフィア!俺の剣さばきをしっかり目に焼き付けとけよ!」
そう言って胸を張り、腰に着いた短刀に手を置く。その瞬間、私の心臓がドクンと脈打つ。
「剣さばきって……何で試合するんですか?」
「決まってるだろ!剣だよ、剣!まあ本物じゃなくて模造刀だけど」
騎士団っていったらそうだ。剣さばきっていったらそうだ。普通に考えたらわかるじゃないか。
それでも心臓の高鳴りは止まらない。落ち着け、落ち着け。アレは自分に向かってくるわけじゃない。誰かが傷つくわけでもない。
「アルバートは剣術よりも体術の方がすごいだろ。どうして剣にしたんだ?」
「相手が剣術主体だから。鍛錬には適してるだろ……ってソフィア?大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
アルバート様に笑ってみせる。大丈夫、笑えてる。
「頑張ってくださいね」
「おう!」
アルバート様は拳を突き上げて試合に向かった。
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お芋(プロフ) - シャル@如月唯奈さん» 読んでいただいて、ありがとうございます!お褒めに預かり光栄です!頑張ります。ありがとうございます!! (2019年9月18日 19時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
シャル@如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!早速読ませていただきました!凄く分かりやすくて良い小説ですね!何より主人公かわいい(*≧з≦)これからも更新頑張ってください〜 (2019年9月18日 19時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お芋 | 作成日時:2019年9月6日 17時