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結果的に幕府軍が撤退するという形でこの戦いは一時的に幕を下ろした。
軍師である珊瑚宮心海や、北斗や万葉が参戦したことで抵抗軍が一気に優位に立った。
僕はできるだけ離れた所で邪魔にならないように隠れ、耳を塞いでいた。
ビリビリとした元素の痛みと民の戦う声。耳の隙間から漏れ聞こえる武器の鋭い音。
僕はずっときつく目を瞑っていた。
「A殿、大丈夫でござるか」
肩を叩かれて顔を上げると心配そうに僕の顔を覗き込む万葉がいた。
どうやらもう戦いは一段落したらしい。
「大丈夫、ちょっと痛かっただけ。万葉こそ怪我してない？」
「拙者は大丈夫でござるよ、心配痛み入る」
万葉の手を借りてしゃがみ込んでいた場所から立ち上がる。
戦いがあった場所に行くと倒れている兵士たち。もう既に息絶えているものもいる。
どうかせめて、苦しまず迷わず黄泉にいけるようにと手を合わせ、浄化を辺り一面にかける。
気絶していた兵士は意識を取り戻し、苦しそうな顔をしていた兵士は安らかな顔になった。
「…やはりA殿はおもしろい能力を使う。拙者の掠り傷まで治ってしまうとは」
「こういうことにしか使えないけどね…って掠り傷あったの」
そして全ての気を回収していくと、僅かに感じる邪眼の力。
微弱だけどもこの手が麻痺した様な感覚の気はここ最近で沢山感じてきた。
「…やっぱり、邪眼が流されてる」
邪眼工場が稲妻にあるのにファデュイが民らに流さない方がおかしい。
しかも流すなら、劣勢を強いられている抵抗軍に流すのが一番いい。
前線で勝ちたい、軍の役に立ちたい、幕府軍を打ち破りたい。そんな思いの民がここは多い。
神の目を奪われた、もしくは最初から持っていない民らが邪眼を使ってしまったら…？
命を蝕まれる。民の命が危ない。また邪眼に奪われてしまう。
「忠告はした筈だぞファデュイ…はぁ、やっぱり分かり合えない」
とりあえずこの現状を軍師に伝えてからだな、と万葉たちに別れを告げて海祇島へ向かった。
海祇島は珊瑚の美しい、雷雨の激しい稲妻の中でも少し安らげる場所だ。
入り組んだ地形を潜り抜けて、珊瑚宮に辿り着くと一人考え事をしている心海を見つけた。
「こんにちは軍師、先の戦いお疲れ様」
挨拶しながら心海の所まで行こうとすると、ハッとしたような顔で心海は深く僕に頭を下げた。
「お、御目にかかれて光栄です…！神柱様！」
「…ん？！」
あれ、意外と神柱の事知れてる？？
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
