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まだ理性はあった。でももう極刑を下した方が早いと思った。


「人形風情が…調子に乗るなよ」


力を一気に開放すると空間は僕の神力で満たされた。

散兵が持っている奪った神の心で生成された神力など、僕の前ではないも同然だった。

先程の衝撃によりヒビの入った首輪は完全に砕け散り、元素の拘束具も元素力で圧倒してしまえば脆い物だった。


「何だいその力…いっそ妬ましい!」


散兵と意識の繋がれた人形の拳が僕目掛けて振り下ろされたが、シールドに防がれ粉々に砕け散った。

僕のシールドには傷一つ付いていないというのに、散兵達は大事な器の四肢を一つ失ってしまったのだ。

この意識より先に身体が動く感覚は500年ぶりだろうか、気味が悪い。


「神を脅かし、大陸の安寧を破壊するその愚行…」


カンッ、と槍先が床に接触した音を合図に、神力は拘束具として二人に襲いかかった。


「死を持って償え」


一人目、と散兵の首に近づいた瞬間、拉致られた瞬間のように辺りが暗くなり始めた。

しかし力を開放しているせいで全てがスローモーションに映り、消えていく散兵の首を掴む。

力を入れて、散兵の首の部品がパキッと音を立てた時、それが妙にクリアに鼓膜へと伝わり、意識がはっきりした。


「神柱、っ!」

「…君は、いつまでそうやって生きるの」


無意識に零れ出た意味のない言葉。

その時の散兵の表情と、その目に映る僕の情けない顔と言ったら。

散兵は今度こそ闇に呑まれて消え、僕は元いたであろう場所に戻された。

急に明るい場所に戻されて目がチカチカする。瞬きを繰り返す内に漸く慣れてきた。


「…逃がした、最悪だ」


グシャリと髪の毛を乱雑に掴み、そのまま掻き毟った。

確信した。あの二人がスメールを始めとする大陸にとって脅威になる事。

そしてこの計画は博士の実験の一環であり、散兵があの日と同様の道筋を辿っている事。


「僕は神柱…民と神を守る、器官…」


暗示をかける様に俯いて繰り返す。

忘れてはいけない、僕の立ち位置と責任。


「…は〜、やめよう。これ以上考えたら頭痛くなる」


思考を放棄して旅人達の所に戻る為に歩く。

口ではやめだと言っても、頭はまだ思考を手放そうとしない。

出生を知っていたとして、看過出来る事とできない事がある。

愛する民の劣で非情な姿は流石に精神的に堪えた。

何より、自分がこんなに冷酷で残忍な一面を持っている事を、久しぶりに思い出してしまったのがショックだった。

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作者名: | 作成日時:2023年9月17日 22時

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