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「早く行くぞ!旅人、A!」
「パイモンはしゃぎ過ぎ、時間通りにしか始まらないよ」
「相変わらず元気だなぁ」
バザールへの道を急ぐパイモンを追いかける様に旅人と歩く。
旅人も楽しみだったのか少し隈ができていた。珍しい。
「あ、ドニアザードだ!おーいドニアザード!」
「待ってよパイモン!」
横を走り抜けていく旅人を目で追い、人知れず賑わっているバザールを見てほっこりする。
花神誕日をこの目で見るのは実に何百年ぶりだろう。本人不在だけど。
「こんにちは、ドニアザード。いつもより元気そうだね」
「こんにちは神柱様!えぇ、ニィロウの踊りをとっても楽しみにしていたの!」
にこにこと嬉しそうに笑う元気なドニアザードに内心ほっとした。
ドニアザードには資金繰りをしてくれた事を神柱としても一民としても感謝している。
このまま恙無く行われれば良いな。
「旅人、僕少し辺りを散歩してくるね」
「うん、わかった…その、気を付けてね?」
旅人は少し心配そうに僕に微笑み、送り出してくれた。
急に気を付けて、なんてどうしたんだろう。
昨日のあれを見られていたのだろうか。いや、あの近くにいれば圧に耐えられない筈。
「…まさかアレが勝手にこっちに来るなんて思ってもなかったけどね」
昨日の会話を思い出して不快感を味わいながらバザールを進む。
やめだやめ、今日はめでたい日なんだからよそう。
「ニィロウの踊りは初めて見るなぁ、後で挨拶したいな」
「残念だけど、君は踊り子どころか踊りすら見れないよ」
瞬間、禍々しい程の邪気と濃い元素に身体を包まれる。
真っ暗な世界に閉じ込められ、手と足を元素で拘束され、首輪を付けられる。
痛みと視界を少しずつ慣らしていくと、その正体が浮き彫りになる。
「はぁい神柱、久しぶりの再会だね」
「僕はもう会いたくなかったけどね」
無数の管に繋がれた散兵が僕を見下ろしていた。どうやら本当に神の創造とやらは着々と進んでいるらしい。
散兵は余裕の笑みで僕を迎えた。もう神になったつもりか。
「僕が直々にこの神聖なる空間に招待してあげたんだ、光栄に思うと良いよ」
「禍々しくて地獄かと思ったけど」
煽ってみるがそれでも余裕の笑みを崩さない。でもそれ以上に不快なのが、博士がいる事だ。
あの日と同じ様に下卑た笑みを浮かべている。
「お前達は神柱を敵に回している事を理解しているの?」
「敵?君はもう少しで僕に膝をつく運命なのに」
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作者名:光 | 作成日時:2023年9月17日 22時