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「はー、そっかそっか…旅人に免じて今日は夢枕に立つのは勘弁してあげようかな」

「魈もAに説教されるのは勘弁だって言ってたぞ!」

「…自覚あるんだ、やっぱり立とうかな」


魈は、というより周りの仙人達は昔から僕に対して過保護だった。

のくせに魈は平気で無茶をする。人伝にそれを聞く僕の気持ちにもなってほしい。


「あーあ、いいなぁ…僕も魈に会いたいよ」

「あれから会ってないのか?」

「…パイモン、僕は大陸でも割と忙しい方だからね?」


うりうり〜、とパイモンの頭を撫でたり頬を伸ばしていると、旅人が何かを思い出した様に自身のバックを漁り始めた。

あれでもないこれでもないと出された大量の荷物の中から出てきたのは一通の封筒だった。


「これ、魈から預かってたの忘れてた…」

「…手紙?珍しいな」

「鍾離先生に凡人の事を吹き込まれて書いたんだって」

「帝君…」


凡人一年生の帝君が仙人に吹き込むってどんな現象だ、なんて考えながら封を切る。

中には一枚の便箋と、アオギリの葉で作られた蝶が二匹。

真っ白な便箋を開くと、ちょっと拙い文字で綴られた古語に目が行く。


「んえ?これって何の文字だ?テイワットの文字じゃないみたいだぞ」

「覗かないでよ…これは昔の璃月で使われてた古語。魈が文字を覚えたのはだいぶ前だし」

「オイラ全然読めないぞ…Aは読めるのか?」

「読めるよ、2000年生きてるからね」


魈からの手紙は、僕の身体を気にする文、帝君や周りの仙人と璃月の様子、璃月での騒動の事が書かれていた。

文を目で追っていくと、最後の文に小さく綴られている文字が気になった。


「何かあればすぐに呼べ、我は今すぐにでもAに会いたい」


そこで文は終わっていた。僕はそっと便箋を抱きしめた。

今まで手紙なんて贈ってくれた事なかったのに、魈自ら僕に好意を伝えてくれた事実が何より嬉しかった。

僕は返事の代わりに少し大きな葉を手折り、仙法で蝶を作った。

少しの返事と、浄化能力と、ありがとうを込めて口づけをし、魈に向けて蝶を飛ばした。


「返事送ったの?」

「うん、こういうのはすぐ送りたいから」

「A、すっごい顔がニヤけてるぞ」

「…そりゃそうだろ、魈からの手紙だよ?嬉しくない訳ない」


この手紙を持っていればどんな痛みも苦境も耐えられると思える位、嬉しい。

上着の内ポケットに手紙を折って忍ばせ、上から撫でる。

今日は痛みのない良い夢が見られそうだ。

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作者名: | 作成日時:2023年9月17日 22時

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