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「え、えぇまぁ。しかしどちらでそれを？」
「風の噂さ。何か大掛かりな事でもしているのかな？」
「いえ、とある物がなくなってしまったので…少し」
様子の変わった賢者達に、やっぱりかという確信と少しの落胆。
輸送中の強盗と教令院の警備強化は整合性に欠ける、僕でもまだマシな嘘がつけるよ。
これ以上話しても民への憎しみが募るだけな気がした。
早々に切り上げたほうが良いだろうと茶を飲み、アザールににっこりと笑う。
「そう、教令院には神から賜ったものも沢山ある。くれぐれも扱いに気をつけたほうがいい」
「その通りでございます」
「まぁ心配はしていないよ、聡明な君たちなら大丈夫だろう」
態度の柔くなった僕に賢者たちはホッとした様子をみせた。
そこからは賢者たち軽く懐柔していろいろな話を聞いた。
流石賢者と言うべきか下手な真似はしなかったけど、最後まで僕を欺こうとする態度は変わらなかった。
僕は敢えて茶を残し、席を立った。
「忙しい草神様には今回も会えそうにないし、僕はここらで失礼しよう」
「でしたら見送りを…」
「必要ないよ、何やら忙しそうだしね」
おろおろする賢者たちを尻目に、扉を開け放ってそこでピタリと立ち止まる。
いくら僕が優しくて聡明な強き神柱と評判でも、苛立つことくらいある。
「…それじゃまたね、賢者達」
この発言を経て、教令院がどのように動くか楽しみだ。
宣戦布告といこう。
「博士と散兵によろしく」
バタン、と重たい扉があからさまな程大きな音を立てて閉まりきった。
追われては困る、と僕は即座にオルモス港へ飛んだ。
扉の外は、賢者達の焦った声が響いていた。
―――――――――――――
旅人side
アルハイゼンに指定された場所で、ドリーから買った物を持って合流した。
これが何なのかはわからないけれど、神への手掛かりになるのならなんだってやる。
これらの行為は神を知る為だと言えば、方向性は間違っていないという。
「この間教令院は砂漠であるものを無くした。それが、」
「神の缶詰知識、だろう？」
アルハイゼンに缶詰について問うていると、聞き慣れた声が鼓膜を震わせた。
Aは何だか疲れた様子で私達の方へ歩いてきた。
「神の缶詰知識？」
「…名前はあっている。だが、公共の場で大きな声で言うのは感心しないな」
「それは失礼、でもどうせここの民等は僕たちの話に興味なんてないさ」
さ、続けて。とAはにこやかに微笑んだ。
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
