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嵐の様に去って行った二人をぽかんと見つめたまま、その場に取り残された僕。
日陰で行き交う民らを眺めながらこの先の事を考える。
神の目の持ち主を一人ずつ当たって協力を仰ごうか？
それとも大きな事は僕で片付けて後の処理と対策だけを民に考えてもらうか？
実に悩ましい。ブエルを救う事が最優先ではあるけど、この国の成長を促す事も僕の仕事。
「あーもう！武力行使できる選択肢がなくて動きにくい！」
ぎゃんっ！と心の中で吠えていると、近くに知ってる気配を感じた。
これは…と少し嬉しくなり日陰から飛び出すとやっぱりな二人がいた。
「わ！Aじゃないか！急に出てくるなよぉ」
「あはは、ごめんごめん。二人の気配感じて嬉しくなっちゃって」
「Aももうスメールにいたんだね」
元気そうな二人を見て安心しつつ、やっぱりかと耳に目線がいく。
この国は知恵の国と言えど制限がかかっているから、この国の民はアーカーシャという彼女の遺品を使用している。
その知恵は全て世界樹に記憶され、知恵を閲覧できる。一部を除いて。
僕はアーカーシャ端末はつけていない。でもそうなると不自然だから幻覚をつけている。
「うん、二人は今日来たの？」
「おいら達数日はいるぞ！スメールは広いからAとは会えなかったんだな」
「え、そうなの？じゃあ僕が氷膜に籠ってた頃かな」
スメールでもう既に旅を始めていたという二人は、なんだか難しい顔をしている。
旅人は神を探しているわけだから、もしかしてと思って聞いてみた。
「ねぇ、もしかして草神について悩んでる？」
「う、うん。スメールの草神って代替わりが起きてて、現草神を信仰してる人って少ないんだね」
「割と知ってるんだ。で、教令院側の事も知ってると？」
「前草神の死を認めたくない、って。草神はちゃんといるのに」
旅人はここまでにレンジャー長と知り合い、ドニアザード達とも話したそうだ。
そして、町で色んな人に聞き込みをしたらしい。
セノの言っていた通り教令院が国を牛耳ってる今、現草神を祝う行事や信仰者はかなり肩身の狭い思いをしているらしい。
バザールの民と、教令院の民に話を聞くなんて流石の行動力の持ち主だ。
教令院の民は身勝手だな、とつくづく思う。神の誕生は、本来喜ばしいものの筈なのに。
「それに、私変な夢を見たの」
「変な夢？具体的にどんな？」
「大樹が目の前にあって、確か女の子の声で、〈世界が私を忘れて…〉って」
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
