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「これは…造られた空間?」


真っ暗な空間。目の前には蹲ったブエルが座っている。

ブエル、と手を伸ばせば何かに阻まれる。多分これが、さっきのノイズの正体。

所在地は判明した。恐らくファデュイの実験によりブエルはここに幽閉されている。

今まで言葉巧みに賢者たちが僕を騙し、ブエルに会わせなかった訳はこういう事か。

民を過信しすぎたかと内心舌打ちしちょっと踏みにじられた気持ちになった。

まぁそんな事はさておき、ブエルをここから出すには割と複雑な事柄が絡みそう。

これがもし博士が言っていた実験の副産物なのであれば、引き剥せばブエルに何らかの影響があるかもしれない。

また、これがブエル本人の心の中だとしたらブエルを苦しめる結果になる。

どちらにしろ、今は干渉も攻撃もできない。


「何もできない、とは中々に辛いな…」


ブエルの後姿を見つめ、その小さな背に懺悔しながらゆっくりとその世界を後にする。

スメールが内側から崩壊するのを防がなければいけない、僕は強く拳を握りしめた。

―――――

「とは言っても、何から始めたらいいかな…やっぱり大元を叩く?」


それではスメールの民の為にならないし、と思考を巡らせる。

教令院に潜入するのもありだけど、時間がかかり過ぎる。もっと何か効率のいい方法…


「あぁだめだ!分からない…それらしい民に接触してみるか?」


スラサタンナ聖処の周りを呻きながらうろうろしていると、近くの木陰で倒れている民を見つけた。

ぐったりと横になっているその子は、とても身なりが良くひ弱そうだ。


「大丈夫?意識はある?」


声をかけても応答がない。直ぐに楽な体制にし、浄化をかける。

顔が真っ赤で、よく見ると手に包帯が巻かれている。そっと触ってみると魔鱗病と呼ばれる病の気だった。

魔鱗病は先代草神の事柄が絡んでおり、僕でも簡単に治せない。

とりあえず水を飲ませ、身体を傷付けない程度に浄化をかけ続ける。

この子はきっと、魔鱗病の影響で余命幾許もないのだろう。この子の生気があんまりにもない。


「う…ぅん…あら?」

「あ、目が覚めた?よかった、倒れてたんだよ」


ゆっくりと起き上がった少女に優しく声をかけると、はっと覚醒した少女は思いだした様に叫んだ。


「ディシアに見つかっちゃう!」

「でぃ、ディシア?」


少女はあわあわと身支度を整え始めたが、多分もう遅い。


「お嬢様…ここにいたんですね」


それっぽい民が迎えに来ているから。

・→←スメール



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作者名: | 作成日時:2023年9月17日 22時

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