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スメール ページ27

「どこ、ブエル…何処にいるの」


スラサタンナ聖処の屋根の上で昔ブエルと繋げた意識を頼りに居場所の特定を試みたが繋がらない。

変なノイズがかかり、上手く位置の把握ができなくなっている。

機械音の様な、人の話し声の様な何かが接続の妨げとなり、焦っている僕にはとても厄介だ。

博士のあの煽りが本当ならば、散兵によってブエルの存在が亡き神になってしまう。


「そんな事絶対にさせない…あの子の為に、絶対に」


その時、ふととある事に疑問を持った。

何故、教令院たちのような草神を信仰している民らはこれを止めないのだろう。

実験と言えど神を創造する様な大きな物だ。大規模にもなるだろう、代理で統治する教令院の賢者達が気づかない筈がない。

いくらファデュイの計画が隠密と言えど限度はある。でももし、教令院側がそれを容認し加担しているとしたら?

彼らはマハールッカデヴァ―タを酷く崇拝していた。新草神のブエルにはあまりいい目を向けていなかった。

スメール内部の大きな力がブエルに牙を向けているのだとしたら。

まずい。まずすぎる、一番考えてはいけない事だったのかもしれない。


「…頼れる民はいない、か」


今はいち早くブエルの安否を確認しなければいけない、でもスメールに頼れる民はいない。

であれば方法は一つ。民を信じれないのなら、知恵を信じる他ない。

スメールは知恵の国だ、あの子のアーカーシャに残った知識は嘘をつかない。

幸い今から接続する場所は民は入れない、あそこであればより確実にブエルを特定出来るだろう。

世界樹は、何よりもこの世の深淵を知っているから。


「…待っててね、ブエル」


神柱はこの大陸を渡り歩くに辺り、様々な場所への接続、干渉が許されている。

大きな力を使えば、それは大陸の何処にでも繋がる事ができる。

天理に貰った力で、世界樹と現世の結界に侵入し世界樹側に足を踏み入れる。

足を付けた瞬間、ぶわりと神聖な空気に身を包まれ、周りが一気に静かになる。

大きな一本の木が空間を埋め尽くす様に根を張り、荘厳にこの世界の全てを見守っている。

この世界樹のある世界は何千年も前から変わらない、あの子がいなくなった今もその姿形を保っている。

僕はその木に近づき、そっと触れる。頭に流れてくる膨大な知識の数々、その中からブエルの情報を探す。

その情報に触れ、奥深くまで探っていく。

見つけたその情報の中は、ブエルに似合わない、静寂が生きる様な空間だった。

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作者名: | 作成日時:2023年9月17日 22時

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