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それが、民や神が自分の手で作り上げていくこの世界の中で僕にできる事だ。

民の間で起きる戦争は神柱が仲裁する事ではない、神への信仰も神柱が取り仕切る事ではない。

全て今をその地で生きる者たちが自分たちで築き上げていく物だから。


「この世界は大勢の利益の為に少数が犠牲になる事がある。それは民も神も、僕だってその歯車になる」


僕と旅人の目先には、宝盗団に囲まれた女性と子供がいる。

立ち上がった旅人を腕で静止して、僕は喋りながらその方向へ歩き出した。


「それらは仕方のない事だと思う、そうやってこの世界はうまく回っているから」


手の平から武器を生成する僕をみて、旅人はそっと後ろからついてくる。

宝盗団は親子に掴みかかり、今にも攻撃しそうな勢いだ。


「でも僕は、そんな世界で謂れのない理不尽に巻き込まれて涙を流す民や神を守れる様な…」


暴力を働こうとした宝盗団の男たちは、それを行う事はなく地面に倒れた。

氷元素が辺りに充満して、子供と女性はそれを不思議そうに眺めている。


「そんな民や神に手を差し伸べられる存在で在りたいと思うんだ」


旅人の方を向いてにっこりと笑うと、旅人やパイモンも返事をする様ににっこりと笑った。

大丈夫かい?と二人に手を差し伸べると子供はキラキラした目で僕にしがみついてきた。


「凄い!どうやったの?!ねぇ俺にも教えて!」

「こら宗明!すみません家の子がどうも…助けて頂き有難う御座いました」


女性は深々と頭を下げた。子供は興奮した様子で教えてとせがんでくる。


「…どうして君は強くなりたいの?」

「俺もうすぐ兄ちゃんになるの!弟の事も父ちゃんや母ちゃんの事も守れる様になるんだ!」


見ると女性のお腹はかなり膨らんでいて、パイモンが興味深そうにそっと触っていた。


「そっか!じゃあ君がもっといいお兄ちゃんになれる様に少し教えてあげる。これができたら、君は僕よりも強くなれるよ」

「え!知りたい知りたい!」


無邪気に教えを乞う姿は幼少期の僕そっくりだ。純粋で守りたくなる。

そうだ、僕はこういう民の姿が好きなんだ。民が平和に暮らしてるのが一番嬉しい。


「君のその勇気と力は誰かを痛めつける為じゃなくて守る為に使う事。本当に強い人は弱い者いじめなんてしないからね」

「え?それだけ?」

「うん、それだけ。それだけで君は絶対強くなれるよ」


そう言うと子供は分からないながらも元気に頷いて、女性と帰路に家に帰って行った。

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作者名: | 作成日時:2023年9月17日 22時

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