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でもそんな生活も長くは続かなかった。カーンルイアの民がセレスティアの恩恵を受けようとした。

カーンルイアは世界の各地で戦争兵器をばら撒き、様々な実験を行っていた。

そしてその手が、触れてはいけないセレスティアにまで伸びてしまった。

セレスティアに触れようとした民に神々は容赦しなかった、そしてその国は破滅に追われた。

痛みと苦しみで当時の事は朧げにしか覚えていなかったが、結界に覆われる前に空を逃がした記憶だけはある。


「妹とこの世界から去る」


そう言っていた気がする。それが懸命だと僕も思った。

けれど次に僕が身体的に目を覚ました時に見た物は、アビス教団への仲間入りを果たした空の姿だった。

空は僕も教団へ誘った。民を愛する僕を見て仲間になれると思ったのだろう。

僕も最初空寄りの思考だった。民がどんな過ちをしていたとて愛する存在である事に何ら変わりはなかった。

そしてその民を目の前で滅ぼしていく神々に恐怖を抱いていたし、少しの憤りもあった。

でも、アビスに染まろうとする神柱を天理が許す筈もなく、暫く軟禁生活が続いた。


「ごめんね、空…僕はそっち側には行けないよ」

「…Aも俺を裏切るの?」

「そういう訳じゃ…」

「Aは俺と同じだと思ってたんだけどな」


残念だ、そう零した空はアビスの使徒らと共に教団に染まっていった。

伸ばした手の先に掴める物は何もなくて、空虚だけが僕の味方だった。

そうして僕は大きな蟠りとすれ違いを残して、空の友人としての枠から外れた。

アビス、神、民、天理、僕は神柱としてこの4方向の味方を常にしながら中立を保ってきた。

そして最近は公子に諭されファデュイにも嫌々ながら味方になっている。

ただ、あの日の恐怖から天理と一部の神にはいつも「はい」と言ってしまう。

味方という鎖に雁字搦めにされ、自らの正義も砕けそうになりながら器官になる毎日。

それでも空の事は一度たりとて忘れた事はなかった、それ程優しすぎる子だったから。


「君のお兄さん、空は…いつだって優しかった。きっと今もその優しさが空を突き動かしてる」

「…うん、お兄ちゃんは優しいよ。私の自慢」

「ふふ、そうだね。だからこそ、今の空の優しさが何処に向いているのか探さなくちゃいけない」


涙で赤くなった目尻に触れ、ゆっくりと言葉を紡いだ。

これで蛍の迷いが少しでも、一瞬でも消えればいいと、そう思って。


「だから君は、終点に辿り着かないといけない」

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作者名: | 作成日時:2023年9月17日 22時

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