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過負荷の影響で淑女は体制を崩し、そこへ一気に旅人が畳み掛けた。
流石の淑女も抵抗し、火炎を撒き散らしながら旅人に襲い掛かる。
しかし旅人の方が行動がかなり早く、淑女にの急所へと攻撃した。
淑女は衝撃で中央へ転がり、荒く息を吐いた。もう力は出ないようだ。
それが、御前試合終了の合図となった。
「…もうよいでしょう」
小声でそう呟いた将軍は上座から淑女の方へゆっくりと歩き始めた。
死への恐怖か、プライドか、淑女は何か叫んでいたが将軍には一切聞こえていない様だった。
そして淑女は、将軍の一太刀により塵となってしまった。僕はそれをただじっと見つめていた。
御前試合に勝った旅人は本丸から生きて出る事を許されたが、旅人の顔はずっと晴れないままだった。
僕は二度と動かない淑女の遺品として、残り塵をそっと集めた。
これは後々スネージナヤに送る事になるだろう。
パイモンは旅人を心配して色々な言葉をかけていたが、今の旅人には何を言っても駄目だろうと首を振ると大人しくなった。
時折頭を抱えて苦しみだす旅人を介抱しながら本丸から出ようとすると、ドタバタと大勢の足音が聞こえてきた。
警戒していると、そこに現れたのは抵抗軍の皆と万葉達だった。
「万葉？！ゴローも…」
「A殿！旅人！無事だったでござるね」
抵抗軍の皆は旅人の無事を喜び、安堵した顔になった。
その瞬間背後に雷元素を感じた。来る、と思った時には背後に将軍がいた。
僕もろとも旅人目掛けて刀を振り下ろす将軍に、僕は先の疲労が蓄積されてシールドすら張れなかった。
旅人を守る一心で旅人に覆いかぶさる。死ぬかもしれない、が相手は人形だ。仕方ないと割り切られてしまうだろう。
きつく旅人を抱きしめ、背後の将軍に抵抗しようと試みた時、僕の横を疾風が駆け抜けた。
ガキンッ、と鋭い音が辺りに響いた。万葉が、将軍の一太刀を自身の刀で受けきった。
でも僕は見ていた。万葉の腰に掛けてある主を失った神の目が、紫色に輝きを取り戻した瞬間を。
「万葉！」
将軍に弾き返されてしまったが、万葉の勇姿を見た抵抗軍は次々に勇み立ち、将軍へと向かっていった。
感じる痛み、見ると神像に埋め込まれた神の目が次々と光を取り戻していく。
民の願いが、苦境を経て尚消える事のない思いが再び光を戻していく。
激しい痛みに襲われながらも、嬉しさから僕は将軍に向かって一言叫んだ。
「ほらね！」
瞬間、僕は突き飛ばされた。
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
