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裟羅をおいかけて本丸に足を踏み入れると、そこには将軍と淑女がいた。
煽る様に小馬鹿にしてくる淑女の物言いに旅人は若干キレていた。
僕はそれよりも、淑女の横で無造作に転がっている裟羅の容体の方が気になっていた。
「久しぶり、淑女…ねぇ裟羅は」
「殺してなんかないわよ、あんた口を開けばそればっかりね」
「…なんとでも言えば」
不機嫌になった僕を見て淑女は気分良さそうにふふんと鼻で笑った。
旅人と淑女が言い合いを始めるのを横目で流しながら、僕はずっと将軍と目が合っていた。
無機物を見る様な、何でもない様な顔で僕を見下ろす将軍は温度さえも感じない。
本当に造られた存在だなとぼんやり考えていると、いきなり旅人が大きな声で淑女に御前試合を申し込んだ。
御前試合は敗者が死ぬ、正真正銘本物の殺し合い。それを旅人がするの？
負けたらどうするの、空に会えなくなる、とかそんな言葉が喉の奥につっかえて今にも飛び出そうだった。
でも、旅人の覚悟の決まった横顔を見ていたら、事は当然言えなかった。
下がる様に促され、パイモンと一緒に将軍の傍まで離れたが、心配なのか僕の腕から抜けて一番前で前のめりになって見つめていた。
裟羅を治療して、畳の上の二人を見ると、もう既に始まっていた。
上皇から貰った氷の力を使って大きく動いている淑女と、雷元素を使って素早く立ち回っている旅人。
初めて淑女と対峙した日から、旅人は技術面は勿論の事、他の力も強くなっている。
詳しくは教えてくれなかったけど、多分天理に封印された時の力だろう。
淑女の氷の繭を砕いた旅人は一瞬安堵の表情を此方に見せたが、僕は淑女の本来を知っている。
「旅人！気を付けて、淑女は氷の姿だけが全てじゃない！」
僕がそう叫んだ瞬間、氷の繭が一気に弾け飛び、炎の魔女が現れた。
「ロザリン…！」
「…貴方は、あの姿を知っているのですね」
「災厄の時、僕は色んな地域を見て回ったから…」
将軍はそうですか、と興味なさげにまた御前試合の方に目を向けた。
炎の鞭や蝶を使った淑女の広範囲で高火力な技に旅人は悪戦苦闘していた。
流石執行官、やっぱりその実力は伊達じゃない。
「この試合、やはりファデュイでしょうか」
「…どうかな、旅人は君からしたらお尋ね者だろうけど」
攻撃の隙を突いて後ろに回った旅人は一気に雷元素付与状態の剣で淑女へと斬りかかった。
「旅人は、モンドの栄誉騎士で璃月の大英雄だからさ」
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作者名：光 | 作成日時：2023年9月17日 22時
