稲妻 ページ1
海風を感じながら待つ事数十分、本当に早く来すぎたなと反省していると一際大きな船が港に入ってきた。
赤色の旗を靡かせて少し濡れている船を眺めていると見知った顔が降りてきた。
「お!Aだ〜!久しぶりだな!」
「久しぶりだね、パイモン、旅人。それと北斗」
「あぁ!神柱殿に会えるなんてな」
璃月の姉御とトーマに呼ばれていた北斗は近海の海の雷雨が云々と愚痴をこぼしていた。
パイモンは新しい景色に旅人の周りをうろうろとしていたが、肝心の旅人はなんだか沈んでいるように見えた。
「旅人?どうしたの、船酔いした?」
「…うぅん、なんでもないよA。少し、考え事してて…」
無理に笑っている様に見える旅人が凄く心配になった、彼女はいつも真っすぐで勇敢な明るい子だと思っていたから。
後でパイモンにでも話を聞こうかな、なんて思いながら船を見上げると弥帆柱の近くで靡く紅葉柄の着物が目に入った。
「万葉…?万葉だ!」
「ん?あぁ、A殿ではないか!随分と久しぶりでござるな」
「まだ、それは光らない?」
「あぁ、しかし焦る事等ないでござる。風の向くまま探すでござるよ」
主を失った神の目を持つ万葉は放浪先で僕と出逢った。
僕は神柱である事を隠し、万葉が灯したいと願う神の目を灯す事はなかった。
それは万葉が彼を忘れない為でもあり、旅に意味を持つ事でもあるだろうから。
お互いを鼓舞しているともう別れの時間らしく、パイモンに呼ばれてしまった。
長くここにいる意味は確かにないな、と結論付け万葉と北斗にまたねと手を振った。
そして旅人たち連れて様々な手続きを行った。離島は中々外国の民には優しくないらしい。
それでも旅人たちはトーマと共に万国商会に手を貸し、問題を解決し、と相変わらずだった。
ただ一つ、旅人の表情が曇っている事以外は。
「ねぇ、パイモン…旅人何かあった?表情がずっと暗いよ」
「あ、う…えぇとな、その…」
言い淀むパイモンをじっと見つめて少し圧をかけると、観念した様に口を開いた。
パイモンの口から語られたのは、僕が旅人から離れた数日間の出来事とは思えない壮絶な話だった。
謎の男ダインと出逢い、アビス教団を追いかけ、魔人の改造を阻止した事。
彼の兄と思わぬ形で再会し、その兄はアビス教団で殿下と呼ばれる程の権力者になっていた事。
再会した兄とまた離れ離れになった事。
そしてその兄の名前が、僕が昔仲違いした友人、〈空〉である事。
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作者名:光 | 作成日時:2023年9月17日 22時