6. 脱出 ページ6
.
SIDE−千鶴
まだ名前も知らない彼女は、私をこの部屋に連れてきた男に手刀を下され、朝から今の夕方まで未だに目を覚さない。
このまま待ってたらきっと殺されてしまう。
小太刀も取り上げられてるし、あの人たちは私の事情より新選組の都合を優先するに決まっているもの。
この人を起こして一緒に逃げなきゃ。
「あの、!起きて!..あの!」
名前も分からないんだから、揺さぶりながら呼びかけるしかない。
「ッ..」
「!め、目が覚めましたか、逃げましょう!ここから!」
「..__。」
目が覚めたばかりで意識が朦朧としているのだろうか。
「私が先に出て周りを確認して来ます!ちょっと待ってて下さい、必ず戻ります!」
「..は?_え、ちょっと!」
彼女が何か言いかけたが、無視して部屋を出る。
なんとしてでも逃げなきゃ。
そう思い、隣の部屋まで来たところで_
「わっ?!!」
何者かに服の首元を引っ張られた。
「この馬鹿!逃げられるとでも思ってたのか」
そこには昨夜の男がいた。
「離して下さい!」
「逃げれば斬る。夕べ俺はたしかにそう言ったはずだ。」
「逃げなくても斬るんでしょ!私!死ぬ訳には行かないんです!!私にはまだやらなきゃいけないことが!!」
すると、今まで掴まれていた服から手が離され、自由の身となった。
そうして彼はこう言った_
「命を賭けるほどの理由があるんだろ。洗いざらい話してみろ。」
と。
そして私はその言葉に頷いた。
.
30人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おさとう | 作成日時:2021年5月3日 18時