3. 夢じゃない ページ3
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SIDE−千鶴
「んっ__」
ここは_
「..気がついたか」
声のする方に身を捩ると、_
「!!」
夢ではなかった。
昨夜、私を守り、さらには庇ってくれた彼女が居た。
彼女の名前を、そしてお礼を伝えたかったがそれは虚しくも叶わなかった。
口に布が巻いてあったのだ。
口だけではない。腕も縛られていたのだ。
しかし、彼女は口の布は自力で外したのだろうか、首元に落ちている。
「ここはおそらく新選組の屯所。一度は名を耳にしたことがあるだろう」
彼女は戸の向こうを睨むように眺めながらそう私に話しかけてくれた。
気付けば、彼女はより硬く拘束されている。
口元の布は解かれているが、腕に足、さらには腕を巻いている紐の上からも胴体を縛られている。
身体を起こし座っている姿を見るに、その拘束でどうやって起き上がったのか不思議に思ったが、やはり尋ねることは叶わない。
たしかに昨日の彼女はとても腕の立つ剣士だったが、女性をここまで縛りつけるなんて..
そんなことを考えていると、ガラッと戸が開かれた。
「目が覚めたかい。すまないねぇ、こんな扱いで」
そこには一人の男性が立っていた。
「早く彼女の紐を外せ。」
「嗚呼、今外す。ちょっとまっておくれよ」
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そうして私の拘束は解かれたが_
「すまないね、キミの拘束は解くなと言われたんだが..これじゃあ歩けないね、足元のだけ外させてもらうよ」
彼女の拘束は解かれることはなかった。
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作者名:おさとう | 作成日時:2021年5月3日 18時