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SIDE−土方
「アレは辞めろ。お前らが手を出していいような代物じゃあない」
「待て。お前は_知っているのか?アレが何なのかを」
「羅刹。変若水を飲むことによって、異常な身体能力と回復力を得ることができる。_但しその代償は大きく、自らの命を蝕む。アレは紛い物の鬼だ」
知っている。
コイツは羅刹も変若水も全てを知っている。
それに紛い物の鬼、そう言った。とても憎しみに満ちた目ではっきりと、そう。
「お前は_」
「私はアレをこの世から全て無くすために人を、羅刹を斬る。」
俺の言葉を遮って彼女は続ける。
その赤い目に嘘はなく、どこか怒りに満ちているような眼差しだ。
「その為に、雪村綱道を探していたのだ。」
「..ふぅん。それを知ってて、あの子を庇うようなマネをしてたってわけ?」
「..否、あの子があの男の娘だと知ったのはつい先刻だ。お前らと同じく、私は今まで知らなかった_」
「じゃあなんで助けたの?」
「_人を助けるのに理由など必要か?私はそうは考えない、目の前で人が死ぬところを黙って見ているような神経は持ち合わせていない。」
その時嗚呼、コイツはちゃんとした武士だ。そう思った。
「分かった。俺らが知っていることも全て話す。だが、今日はもう遅い、また来い」
「..__。」
女はどこか納得のいかない顔をしていたが、今日は話してやれる気分じゃねぇ。
「斎藤、そいつを連れて行け。..あと拘束も解いてやれ。」
「御意」
そう言って、斎藤と風間という女は俺の部屋を後にした。
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作者名:おさとう | 作成日時:2021年5月3日 18時