検索窓
今日:18 hit、昨日:0 hit、合計:14,704 hit

第八十四夜 綺麗 ページ25

貴「どうして斎藤さんは、その、ゴリョウ、エジ? に参加するんですか」

斎「……」

さて、なんと説明しようか。Aに遠回しな説明は通用しない。

だからなのか、いつもAに対しては真っ直ぐな言い方で接していた。

斎「時間が経てば、変わるものもある。文化も、思想も。それは仕方のないことだ。だが俺はその中で、決して変わることのないものを信じている」

貴「……斎藤さんがいう変わらないものは、新選組とか、ゴリョウエジとかそういう具体的なものではないような気がします」

斎「そうだな。自分自身、その変わらないものが見つかったとは思っていない」

貴(探し続けているから、新選組を抜けるの?)

ますます分からなくなった。あれほど土方や近藤達について行っていた斎藤が。

それでも、分かるのは。

貴「もう会えないんですか」

このままだと斎藤と藤堂は遠いところへ行ってしまうということ。

何もかもが変わっていく。自身の環境も、新選組も。

だから斎藤は抜けたのだろうか。変わっていく新選組を。



斎「……A」

ソッとAの顔に手を添える。目を覆い隠す前髪を優しくはらった。

海の色。青色は見ると気分が落ち着く。

斎「綺麗だな、アンタは」

貴「は、え?」

突然のこと過ぎて、何を言われたのか一瞬理解できなかった。

綺麗? 何が?

急にどうしたというのか。

貴「特に深い意味はないですよね?」

斎「意味がなくこんなことを言うと思うか?」

この一言で全てが吹っ飛んだ。

貴(落ち着け多分私が思っているような意味じゃない。アレだ目の色が綺麗だとかそんなのだ小さい頃からずっと言われてたからね)

貴「あの、そろそろ手を離してもらえれば」

斎「嫌か?」

貴「本当にどうしちゃったんですか」



斎「冗談だ」

そういって斎藤は笑い、手を離す。

冗談というのは、どこからどこまで冗談なのか。なんだか誤魔化されたような気がする。

こんな風にからかうなど、斎藤らしくもない。

気づけばもう春だった。風に吹かれて散る桜の花びらが、ひらひらと力なく地面に落ちていく。

斎「A、これだけは約束してくれ。決して、自分から命を落とすような真似はしないと」

貴「……!」

少しは気にしていたのだろうか。記憶が戻ったAの事を。

貴「……約束します。だから、斎藤さんもどうかお元気で」

第八十五夜 寒天→←第八十三夜 嘘つき



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
76人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナッキ | 作成日時:2017年1月26日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。