第七十一夜 天岩戸 ページ11
原「お、天岩戸が開いた」
雪玉を手に持つ原田がAに気づいた。
外にいたのは原田、永倉、藤堂、千鶴。
原「やるか? 雪合戦」
ユキガッセン、というのは雪を集めてそれを投げる遊びらしい。
どうしようかと斎藤の方を見ると自分で決めろ、とでも言いたげに目を合わせようとしない。
白で埋め尽くされた風景。どうしてもあの鮮血が脳裏によぎる。
でも。
貴(ちゃんと向き合うって決めたんだから)
貴「とりあえず、雪玉の作り方教えてください……」
雪を集めて球状にする。言えば簡単だが固めるのが難しかった。
貴(雪って、冷たい物だと思っていたけど何も感じない)
そこから導かれた結論にそっと目を閉じた。
気づかれてしまえばもっと迷惑をかけてしまうだろう。
貴(危険な行為は控えよう)
藤「出来たか?」
貴「あ、はい。丸く作られるようには」
原「よっしゃじゃあやるか! Aは斎藤と組んでくれ」
斎/貴「な/え?」
原「俺は新八と組むぜ」
藤「おっさん二人でとかずっりぃ」
永「おっさん二人に泣かされるなよ、お子ちゃま?」
藤「……千鶴、本気で行くぞ」
雪「う、うん!」
こうして本気になった藤堂と全くもって大人げない原田永倉組の雪合戦が始まった。
二組の攻防を見て斎藤とAは顔を見合わせる。
貴「……あの」
斎「ああ」
お互い思っていることは同じようだ。
Aは不揃いながらも雪玉を作り、斎藤はその雪玉を次々に投げる。
雪玉は恐ろしく命中し、いつのまにか大乱闘を繰り広げていた。
貴「ウッ」
その雪玉の一発が顔に命中した。勢いに任せてAは倒れる。
冷たい、という感覚はない。顔にかかった雪を払い、上を見た。
澄んだ空。輝く太陽。
久しぶりに空を見たような気がする。
貴(朝も、夜も好きだった。同じ空なんてない。明日の空は今日の空とは違うのだから)
斎「A、立てるか?」
すっかり立ち上がらなくなったAを心配してか、斎藤は砲撃の手を止めていた。
貴「……腕に力が入りません」
斎「休憩するか。あの人達だけでも十分盛り上がっているからな。気づきはしないだろう」
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作者名:ナッキ | 作成日時:2017年1月26日 20時