白昼夢の羊 (ページ8)

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小さな家の中はシンプルだった

こんな山奥で、ちょっと言い方は悪いけどボロボロに見えた家。

だけど中は想像以上に綺麗で。なんとなく、皇輝さんの心の中が見えたような気がする

綺麗好きなのかな。なんて辺りを見渡しているとどこからか持ってきた太めの紐を手に、皇輝さんが私の元へやってきてはそれを両手に巻きつける

「なんですか？これ、」

『逃げられたら困るから、念の為』

「私の信用ないなぁ…」

『暫く大人しくしてたら外してあげるから』

「そうですか、わかりました」

『生きていたかったら、ここから出ようなんて考えないでね？』

手首に巻かれた紐の上に手を重ね、目を合わせる

こくりと頷けば彼の口角が上がって優しい笑みが浮かぶ

普通、あんなセリフを向けられたら怖いんだろうな。頭の片隅でそんなことを考えてみた

だけど皇輝さんだから怖くはなかったし、優しさすら感じる

「逃げませんよ、逃げたところで行く先なんてありませんから」

『そう？…なら良いんだけど』

皇輝さんはそう言うと、どこか違う部屋に行ってしまった

途端に静まり返った室内に少しだけ寂しさを感じたりもして。

そんな気持ちを紛らわす為に部屋を観察してみる。この部屋は広く、家具もいろいろ揃っているところを見る限りリビングなんだろう

ソファにテレビにテーブルに。隣にはキッチンが見える

ってことは皇輝さんが行った部屋は寝室か何かだろうか。外見ではそんなに部屋多そうに見えなかったし。

そんなことを考えていたら、あっという間に時間が経っていた