13-1 励ましではなく ページ21
.
本当は誰かに話したかったんじゃないかって思うほど、口が止まらない。
なのに私の心は一向に晴れなくて、次第に(こんな話を聞かされて彼はどう思うんだろう)って不安が膨らんだ。
「何も感じないのが後ろめたい?」
「うん。そんな感じ」
「そっか」
吐き出す私の言葉を、マナトくんはただ うんうんと聞き入れてくれた。
でも、マナトくんだってどうせ心の中じゃ分かってくれない。
そんな天邪鬼みたいな気持ちを抱いたまま、「聞いてくれてありがとう」なんて言葉を口にする。
「…………俺が無理やり聞き出したんだから、感謝せんで良いよ」
まるで私の心を見抜かれたみたいな台詞に、密かにドキリとする。
マンションの下に着いた頃、マナトくんは私の半歩前に立ってクルリと身体をこちらに向けた。
「“お父さん”って人に会って、なんかしてやりたい事もないの」
「…………ないかな」
「文句言いたいとかも?」
「うん」
「そう、それじゃあ」
シビアな話をしていたはずなのに、どうしてマナトくんはいつものような 優しい目で私を見るんだろう。
その目は不思議と、私の不安を解かしていくようで。
張り詰めたものが溶け出していくように、鼻の奥がツーンとする。
「その人が入り込む隙間もないくらい、ミヅキには、家族からの愛情で満たされてるのかな」
「……、」
「あくまで、そうなんじゃないかって俺が思うだけね」
どうして彼の声はいつもいつも、ふんわり柔らかく、私を包み込むみたいに聞こえるんだろう。
思わぬ言葉に返す台詞を忘れた私は、立ち尽くしてマナトくんを見上げる。
「だって、人を喜ばすことが好きで、嬉しいことを素直に口にしてくれる。大事な人にちゃんと“大事”を伝えられる。
それが出来るのは、ミヅキはそうやって、お母さんとお兄さんに沢山愛情を注がれて育ってきたからじゃないのかな」
何の前触れもなくポロリと、右目から落ちたものが頬を伝う。
思わず上げた手が自分の顔に触れる前に、マナトくんはそっと握りとって指を絡めてきた。
「ミヅキの心はあったかいよー、だし、それでも自問自答しちゃうくらい思慮深い。逃げ出さない強さは少し心配なくらい」
手を掴まれて拭えないのに、ポロポロ止まらないものに目を瞬かせる。
ねえ、マナトくん、ほんとに
「それが、俺から見えてるミヅキの全て」
「俺が知らない面があっても当然」
「そこに後ろめたさを感じちゃったら、こんな事言うくらいしか出来ないけど……、」
「 俺は、ねぇ、今のミヅキが本当に好きだよ 」
.
182人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
befirst(プロフ) - あらしのよるに大好きすぎてなんっっかいも読み返しています!! (11月27日 20時) (レス) id: 73aa1688da (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» 書き手の私、超無意識に寿司桶空っぽにしておりました!たしかに、変わらず食欲旺盛で可愛い笑 おばあちゃんもおばさんも、きっとママから旦那がどんな人なのかは聞いていなかったんですよね…まさに神(読み手)のみぞ知る事実なのです、悔しいことに。 (5月17日 22時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - なかなかの内容なのに、きっちり寿司桶を空っぽにするモンさんを、愛してやまないっ(◕દ◕)そういえば、おばあちゃんも、おばさんも、生きてるとは言ってなかったなぁと、解説を見て思いました!天才っ!! (5月17日 15時) (レス) @page50 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - まおさん» まおさんありがとうございます♡登場人物の気持ちが大きくなればなるほど、描写を書いては消して……この人こんなこと言わんよな、もっとらしい言葉はないかなと考えながら書いているので、そう言ってもらえて嬉しいです。 (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - とんトンさん» ネタバレ私は大歓迎ですよー♡笑 わー、見てくれてるって嬉しくなりますしね!リルアワとのリンクも楽しんでいただければ! (5月16日 11時) (レス) id: 2167f4606f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白 | 作成日時:2023年4月7日 23時