・ ページ7
*
あれから二日後の夜。わたしはすっかり寝静まった吉原の路地を早足で歩いていた。この二日間許可取るためにあっち行ったらこっち行ったり、ほんと散々でした。万が一のために出るときの準備もしてくれてたらよかったのに。
そんな風にぷんすか路地を歩いていると突然出てきた人にぶつかってしまいわっぷという間抜けな声と共に勢いよく尻餅をついた。
「いったあ〜」
「すみません。大丈夫ですか?」
はんなりとした口調の声の主はそれはそれは綺麗な顔をしていた。さらさらの絹のような金色の髪にとろとろと溶け出しているような琥珀色の瞳をしている。この世のものとは思えない容姿についつい見惚れてしまった。
「わ、わたしこそすみません。考え事してて、」
「僕の方こそ、不注意でした。」
そう言って手を差し伸べてきた彼の瞳をもう一度見つめる。本当にとても綺麗だ。まるで、人間ではないような…。
「(人間ではない…?)」
そこで一気に思考が覚醒した。そうだ。このかすかにただよう気配は妖のものだ。彼は、妖なのだ。
わたしは彼の手をとらず勢いよく立ち上がり走り出そうと振り返ったが、その勢いのまままた誰かにぶつかってしまった。
「へえ、えらい積極的やん?」
顔を上げた先には、藤色の瞳をもつこれまた綺麗な顔があった。
「おいセンラ。お前妖だってばれとるやんけ」
「おっかしいな〜。俺めっちゃ上手く隠してるはずなんに」
そんな風に気の抜けた会話をする2人。いまのうちだと藤色の彼を避け走り出そうとしたが腰に手を伸ばされ勢いよく抱き抱えられた。
「ひゃああ!?なにすんのよ!!!」
「いい声出すやん。ちょいと我慢しててな」
「君を君の上司のとこにいかせるのはちょっと都合悪いねん。勘弁してくださいな」
そう言うとさすが妖というべきか。軽々しく建物の屋根に飛び乗り勢いよく走り出した。
「いやああああっ!むりむりむり!!!はやいはやいはやいおちる!!!!とまってとまって!!!!」
「それは無理なお願いやなあ!!黙って俺に捕まっとき!!舌噛むで!!!」
止まるどころか一層速くなり景色が後ろにびゅんびゅん飛んでいく。内臓が浮くような感覚に耐えられず、目をつぶり藤色の彼の首にぎゅっとしがみつくのだけで精一杯だった。
461人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - めちゃくちゃ好きな感じのお話で今後がすごく楽しみです!お身体に気を付けて更新ファイトです!!! (2020年4月26日 0時) (レス) id: dc65f13ca7 (このIDを非表示/違反報告)
しおた(プロフ) - わたぐもちゃん@推しが尊い連盟さん» ありがとうございます!拙い作品ですが、頑張ります! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 4a32e0fe09 (このIDを非表示/違反報告)
わたぐもちゃん@推しが尊い連盟(プロフ) - すごく素敵な作品ですね!!!妖とかいろんな世界観が素敵で………応援してます! (2020年4月5日 11時) (レス) id: f4327bfb3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しおた | 作成日時:2020年4月4日 22時