【薄桜鬼】 君が好きだと伝えたい 【藤堂平助】

第２９幕 呪いし命運、呪われし僕等 ページ11

〜沖田side〜

ーー私は貴方たちの知る北神Aじゃない


きっぱりとそう言い切った声とは裏腹に、

悲しみと諦めを含んだ瞳は寂しげに揺れていた。



嗚呼、本当に。本当に、何も変わってない。

気が強いところも、たくましいところも。

意思の籠もったまっすぐな瞳も、平助が絡むとそれが喜びであろうと悲しみであろうと怒りであろうと、揺れてしまうところも。


悔しいくらい何一つ変わってなくて、やっぱりAはAのままで、なのに僕たちのことは覚えてなくて、嫌になった。



生まれ変わってもAが好きで。

前世を覚えていなくても平助を好きになって。

そんな２人が、どうしてこんな悲しい思いをしなければならないのか。


あの戦乱の時代に生まれ、守り守られ死に別れただけでも、もう十二分に苦しんだというのに。


「…どうして、そんな事が言える。自分が忘れているかもしれないとは考えな、」

「一くん！！！」

「…なんだ」

「頼むよ…やめてくれ。」

「……、平助」

悲痛に歪んだ顔に笑みを貼り付ける平助を見て、一くんだけでなく僕たちまで言葉を失う。



だって、何も言えない。


言えるわけが、なかった。

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