〜第十三話〜 ページ15
「い、いてて…」
松本副隊長がポンポンと傷口に消毒液を塗っていく
「少しは我慢しなさい！全く、こんなに傷だらけになる前に始解すればよかったじゃない。」
「あ、それがですね。私の斬魄刀は、私が傷つかないと意味がないんです。」
「え？どういうこと？」
副隊長が一度手を止め、私の顔を見た。
「そのままの意味です。私の斬魄刀の彼岸花は、私が傷を負えば負うほど、私の攻撃力や素早さ、霊圧が上がっていくのです。だから、無傷のままで始解をしても、あまり意味が無くて…。」
「そういう事だったのね。じゃあ、あんた戦う度に傷だらけになって帰ってくるってこと！？」
「まぁ、そうなります。」
えへへと苦笑いをすると、冗談じゃないわよと副隊長が頭を押さえた。
「いつ頃始解ができるようになったんだ？」
しばらく口を閉じていた隊長が口を開いた。
「えっと、幼いころです。まだ霊術院に入る前です。」
「そんなに前から？」
隊長と副隊長は声を合わせて驚いた。
「私の家は代々死神の家系で、父と母が、子供である私を強くしようとして、三歳ごろから日々教えられてきました。」
なかなかできなかったですけどねと笑う。
「卍解はまだ習得していないのか？」
「えぇ。そこまでの力は私にはなく…」
そう言って目を伏せる。
脳裏に幼いころの記憶が流れている。
少し、嫌な記憶だ。
「そんなに落ち込まなくていいのよ。」
松本副隊長がそう言って頭を優しく撫でてくれた。
「小さいころに始解ができるようになったってだけですごいのよ？きっと、卍解もすぐにできるようになるわ。」
「松本副隊長…ありがとうございます！！」
今は幼いころのことなど、家族のことなど、思い出さなくてもいいのだ。
今は、十番隊のこと、自分のことを考えよう。
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作者名：稀代 | 作成日時：2019年10月5日 16時
