裏表赤司 と 表裏わた司【赤司征十郎】

第28話 ページ29

A「だから……、私の命令がぜった……」



「うあぁぁぁ！！(泣)」



幼い女の子の泣き叫び声によって、何とか終戦を迎えた征十郎とA。




征「……どうした？」



問いながら、女の子の目線に合うようにしゃがんだ征十郎。




「お兄ちゃん私のパンとったぁ」



兄「ひとつ食べたじゃん…、どーせもう買えないよ、お金ないんだから。行くぞ。」



妹「やぁぁーーーだぁあ！」




そんなに高級なものなのか。

そう考え、傷ひとつない財布から、ピンピンの諭吉を５枚ほど出す征十郎。



征「足りなければ出す。…いくらするんだ？」




妹「420えn…」

征「買え」




兄「無理だよぉ！もう200円しかないもん…！(泣)」



征・A「…っ！！！？」



複雑な家庭事情なんだろう と思い込む征十郎とAは、

これ以上は深く聞かなかった。


いらん気遣いである。




妹「食べたい！買って買って買って買っ…」



兄「恥ずかしいからやめろよ…！もうお金ないって言ってるだろ」




征「………仕方がない。貸してやろう。」


諭吉以下の紙幣硬貨を持ち合わせていなかった征十郎は、
420円のために1万円を渡した。



兄「いっ、いつ返すの！？無理だよ！！」



征「大きくなって困っている人がいたらその人に返せ。」



兄「え…だけど…、」



征「因みに、近い将来僕はこのポジションを奪う。」


と、福沢諭吉を指差す。



兄「え！そうなの？確かに載ってそう！お兄ちゃんすごい！」



征「いや……笑うところだ…」


ギャグひっっでぇな。

誰もがこう言いたくなるような陳述であったが…、

そんな中、お腹を抱えて笑う女がひとりいた。



A「はっw…今のはなかなか面白いぞ征十郎w」



A「…………」



と、ウケてしまったことが悔しくなったAは、対抗心を燃やし、トッテオキのシャレをぶちかます。



A「そこは私のポジションだ。」


燃やしてそれってどんだけだ発言に征十郎が返す。


征「いいや、僕のものだ。お前は５円の穴にでも挟まってろ。」


A「笑え。」




兄妹「…………」



言い争う二人を見上げる兄妹。



征「あ…、すまないね。」



征「……もうそろそろ日が暮れるから、買うものを買ってさっさと帰った方が良い。」


兄「ほんとに貰っていいの…？」


征「あぁ。」


兄妹は何度も何度もお礼を言ってから、仲良く店内へ入っていった。

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